編集部がおすすめする、いま読みたい7冊

日々刊行されるたくさんの書籍のなかから、イラストレーション編集部がおすすめする7冊を紹介します。

暑い日が続くこの季節、涼しい部屋の中でゆっくりと本に向き合うのもよいのではないでしょうか? 絵本や漫画、画集などさまざまなジャンルから、お気に入りの1冊を見つけてみて下さい。


『かしこくて勇気ある子ども』

山本美希著
(リイド社)1,800円+税 装幀:鈴木千佳子

生まれてくる我が子への期待と高揚、それに反して世界中で起こる悲惨な出来事……2014年最年少でノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさんを襲った事件を端緒に制作された物語で、若い夫婦の妊娠から出産までを取り巻く出来事、心の機微が読み手の心を強く揺さぶるほど切実に丹念に掬い上げられています。「すべてのかしこくて勇気ある子どもたち そして かつて そうだった ひとたちに」。この結びの言葉のとおり、この物語に関係のない人間は1人としていないでしょう。Web上での連載に合わせた初の横書き・フルカラー漫画、色鉛筆での表現など、山本さんの新たな挑戦にも刮目です。

▶︎『かしこくて勇気ある子ども』

 


『とるにたらないおとこの話』

さかたきよこ+タダジュン絵・お話
SUNNY BOY BOOKS1,600円+税 制作+DSUNNY BOY THINGS

版画家・イラストレーターのさかたさんとタダさんが紡ぎ出す、版画家の男(と愛猫)の日々。男は海の向こうでムービースターになる友を送り出す日も、画商に絵を買い取ってもらえなかった日も、同じ朝食をとって道具の手入れをし、胸の奥のあかりを頼りに制作を続けます。すると、不意に心を照らすある出来事が。一見変哲のない日常に見出されたかけがえのないその光は、ものを作る人たちだけでなく、それらを愛する人の心も照らすに違いありません。

▶︎『とるにたらないおとこの話』

 


『りすとかえるとかぜのうた』

うえだまこと作
BL出版)1,600円+税D:中嶋香織

新しい舟を手に入れ、仲よしのかえるの家に向かうりす。旅の話をするのが大好きな2人ですが、自分たちの住む森を出たことはなく、一緒に旅することを夢見ていました。ところが、ふとしたすれ違いからりすはかえるに会えず、悲しい気持ちを抱え眠ってしまいます。その間も舟は走り続け……。大きな自然の中で小さな2人が交わす言葉と、白い紙の上を走るのびやかで心地よい筆致は、いつのまにか私たちを彼らが住む水辺へと運んでくれます。

▶︎『りすとかえるとかぜのうた』

 


『光と窓』

カシワイ著
(リイド社)800円+税 装幀:間村俊一

カシワイさん自らが選んだ珠玉の文学作品を漫画化した、自身2作目の作品集。安房直子「夕日の国」、宮沢賢治「注文の多い料理店 序文」など計7篇が収められている。モノクロームの世界にもかかわらず、全篇をとおして絵は光に溢れ、1つ1つの言葉も眩しく発光して映る。涼やかで透明感のある描線で描き出された、何気ない日常と幻想が交差するような物語は、時に切なく、儚く、だからこそ息を飲むほど美しい。

▶︎『光と窓』

 


MOTO HIDEYASU MUSIC BOOK~本秀康 音楽イラストレーション集』

本秀康著
(Pヴァイン)2700円+税 D:岡田崇

今年で画業30周年を迎える本秀康さんの3冊目の画集は、「ミュージシャンと音楽」に徹底的にこだわったセレクト。本さんがこれまでに手がけたジャケット、音楽雑誌の表紙、グッズとして展開された作品など、貴重な原画を一挙収録する。もちろん、音楽ファンのみならず愛されるキャラクター「レコスケくん」も。ceroの髙城晶平さんをはじめ、親交の深いミュージシャンとの特別対談もあり、見応え、読み応え共に十分な1冊。

▶︎MOTO HIDEYASU MUSIC BOOK~本秀康 音楽イラストレーション集』

 


『はかせのふしぎなプール』

中村至男作
(福音館書店)900円+税

グラフィックデザイナーとして活躍する中村さんならではの発想が光る、視覚の不思議に触れられる絵本。博士が発明したのは、入れたものが何でも大きくなるプール。そこで博士はプールから覗く一部を見せて、水中に沈んでいるものは何か? と助手に質問していきます。手がかりは少ないのに正体がすぐに分かるもの、あるいは、まったく異なる姿に見えるもの……。次々と現れる何かの一部に想像力が刺激され、ページを捲るたび「?」が「!」と変わる新鮮な驚きに満ちています。

▶︎『はかせのふしぎなプール』

 


『あめかっぱ』

むらかみさおり作
(偕成社)1,300円+税

山口晃さん、宮古美智代さんのザ・チョイスで入選を果たしている、むらかみさおりさんの絵本デビュー作。ある雨の日に玄関を開けると、そこに立っていたのは緑色のおかしな生き物・かっぱ。お母さんから留守番を頼まれたなおちゃんは、かっぱと一緒に特別なピクニックに出かけて……。葉や木肌まで綿密に描きこまれた画面からは、雨の日特有の湿度、優しい雨音がありありと立ち上り、なおちゃんが過ごした特別な1日が臨場感たっぷりに描き出されています。

▶︎『あめかっぱ』

 


本記事は『イラストレーション』No.227の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承下さい。

 

今回のBOOKS REVIEWも掲載されている『イラストレーション』No.227。巻頭特集「人を描く」では、雪下まゆさんをはじめ、いま注目の6名のイラストレーター、アーティストを紹介しています。


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