うつくしい手の描き方(第2回:アタリの種類)

「描ければ一人前」と言われているほど、イラストレーションを描く人にとって難しいパーツ。それが「手」です。手は、指の1本1本がバラバラに動き、情報量が多く、3次元的な動き方をします。そのため、描き慣れるまでが非常に難しいパーツです。

本記事では、4月に刊行したばかりの書籍『うつくしい手の描き方』(玄光社)から一部を抜粋し、マンガ的に「魅せる」ことに特化したうつくしい手の描き方を紹介します。

第2回のテーマは「アタリの種類」です。

(全3回・掲載のまとめはこちらから)

 

手の描き方の種類

 

扇型

扇型は手の甲を簡単な四角形で描き、指をひとまとめに描くアタリの方法です。

バランスの取れた手が描けます。複雑なポーズを描くのには向いていません。

 

ブロック型

関節ごとに指をブロック状に分けるアタリの取り方です。各ブロックを自由に組み合わせることで、メリハリのあるポーズが描けます。

 

関節型

指の骨組み(線)に肉を付けていく方法です。関節の位置を自由に動かせるのが特徴です。これにより複雑な指の形でもアタリの配置を動かして対応できます。

 

複合型

複数のアタリの取り方を組み合わせる方法です。各アタリの特徴やメリットを組み合わせるので、上記の3つでは難しいポーズが描けます。

 

続いて、それぞれのアタリの描き方を見ていきましょう。

 

アタリの種類① 扇型でバランスを掴む

まずはシンプルな手の描き方を紹介します。開いた手などの平面的な形の手を描く場合は、扇型のアタリを使います。手の長さやバランスも見ていきましょう。

 

まずは手の甲のアタリをパンのような形で描きます。次に親指の付け根となる三角形を描きます。手の甲の3分の2の高さに2等辺三角形で描きます。

指と甲の境界部分は、付け根を目安にやや右下がりの曲線を描きます。

 

指の付け根(MP関節)のアタリを〇で描きます。均等に並べましょう。

 

 

指のアタリを描きます。スラリとした長い指を目指して、手の甲に対して1:1よりも長くアタリを取ります。横線は関節の位置を示します。への字状に描きます。

 

3のアタリを参考に指のアタリを描きます。関節は付け根~第2関節、第2関節~第1関節、第1関節~指先と描いていきます。親指は三角形の左寄りに描きます。

 

形を整え、清書します。手の甲のアタリは水かきの位置に来ます。なので、指の付け根の縦線は、手の甲のアウトラインより少し下に突き抜けて描きます。

指の輪郭は、関節ごとに少し反らして描くとスマートでかっこ良く見えます。

 

アタリの種類② ブロック型で立体を描く

ブロック型のアタリは、パーツが重なる場合や、角度の付いた手を描く際に使用します。パーツをブロックで描くことで、手の厚み、奥行き、立体感を掴みやすくなります。

 

まずは根元となる手首のアタリを描きます。平らな筒のような形状で描きます。

 

手首のアタリの上に、手の甲のアタリを描きます。1 と同様に平らな筒状ですが、縦の輪郭が内側(右下方向)に曲がります。

 

手首部分にヒジのアタリを円で描きます。カマボコのような形で親指の付け根のアタリを入れます。手の甲には、ひし形でMP関節のアタリを描きます。小指の関節はこの角度だと隠れて見えません。

 

指先のアタリを描きます。円筒をイメージします。このポーズでは人差し指が少し曲がっている状態です。それを前から見ているので、人差し指の付け根から第2関節までが少し短く見えています。

 

清書します。ブロックアタリの時には描いていなかった母指球の膨らみや、親指の付け根の出っ張り、水かきなどを描き足します。

 

アタリの種類③ 関節型と複合型

指はそれぞれに細かく曲がったり、向きを変えたりします。そんなポーズを描く時は、関節型のアタリを使います。手の甲はボックス型に近く、指先は線で描写するアタリです。

 

関節型

ベースとなる手の甲はボックス型に近い形で描きます。MP関節部分に〇でアタリを描き、指は線で表現します。関節は小さな〇で節を作って分かりやすくします。

 

筒状のアタリで細部の形を整えます。手の甲の輪郭も少し描き足しています。関節型の指アタリは線を無理に指の中央にしなくても大丈夫です。

 

輪郭や手の甲の筋を描き足し、清書します。中指は第2関節を曲げています。それが分かりやすいように、少し左側に寄せ、重なりの部分を薄くしました。

複合型

清書します。MP関節の部分に筋を描き、手に凹凸の表現を加えました。薬指は強く曲げているので、関節部分にシワを描き入れて完成です。

手の形によって、アタリも大きく変化します。時には扇型、ボックス型、関節型を複合して使うこともあります。手首から第2関節までの流れを扇型で掴みつつ、複合型のアタリでは第1関節を強く曲げることができます。

 

ひし形でMP関節のアタリ(♢印)を取ります。同時に、第2関節まで扇型アタリを取ります。これで指の動きと連動させやすくなります。小指と薬指は強く曲がっています。扇状だと動きを捉えにくいので、そこから先は線でアタリを取ります。

円筒状のアタリで指の形を描き、側面をボックス状にして立体感を分かりやすくしました。小指は強く曲がっていて、第2関節から先が見えません。

清書します。MP関節の部分に筋を描き、手に凹凸の表現を加えました。薬指は強く曲げているので、関節部分にシワを描き入れて完成です。

 


『うつくしい手の描き方』(玄光社)

難しい手を描くための第1歩として使える、初心者向け「なぞり描き」練習ドリル。なぞり描きを、「アタリ」「細部アタリ」「清書」の3段階に分け、手の形の成り立ちを確認しながら練習出来ます。


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