読書だより:第13号『センス・オブ・ワンダー』

週の始まりに、絵本や漫画、創作に関する書籍などを中心に、楽しく読める1冊をご紹介する本連載。お昼休憩や帰宅後の時間のお供に、はたまたお子さまへの読み聞かせに……。気になる本に出会ったら、ぜひ手に取ってみてください。

じっくりと読みたい作品を掲載してきた8月、最後にご紹介するのは『センス・オブ・ワンダー』(筑摩書房)です。

 


『センス・オブ・ワンダー』

レイチェル・カーソン 著 森田真生 訳+著 西村ツチカ 絵

(筑摩書房)1,800円+税 装丁:鈴木千佳子

レイチェル・カーソンの未完の名作「センス・オブ・ワンダー」に、待望の新訳が登場しました。新訳に続く後半には、訳者である独立研究家・森田真生さんによる書き下ろしの「僕たちの『センス・オブ・ワンダー』」を収録。家族と暮らす日々の中で出会う自然と驚き、そこから見出す生きていることへの「本原的な歓び」を「そのつづき」として書き継ぎます。

物語を彩る装画と挿絵はイラストレーター・漫画家の西村ツチカさんが担当。「驚異(ワンダー)」に満ちた自然とその中を歩む人々を幻想的に描きます。

雨をふんだんに吸いながら地面を覆うコケ類、草むらに“公然と隠れている”昆虫たち。さまざまな色の落ち葉や、魚や虫を運んでくる川の流れ、目を凝らすうちに溶けてしまうような儚く複雑な雪の結晶の構造。そして、夜の闇の奥から届く生き物たちの息遣い、空にさんざめく無数の星々。

私たちを取り巻く自然は数えきれないほどの驚異、そして想像を絶する美しさに満ちています。それらの自然がもたらす「ワンダー」に開かれる感受性を、著者であるカーソンは「センス・オブ・ワンダー」と呼びました。

西村ツチカさんによる精緻な挿絵に彩られ、新訳で語られる「センス・オブ・ワンダー」と呼応するように、後半には訳者である森田さんが子どもたちと過ごす日々の中で見つけ、触れる数多くの「ワンダー」が、それらに対する驚きや感嘆が瑞々しく描かれます。

——全身に降り注ぐ光子、外套に舞い落ちる結晶として、自然は、惜しみなく「宝物」を配り続けている。これを受け取る子どもたちの声が、いまもこの星のあちこちに響いている。(「僕たちの『センス・オブ・ワンダー』」本文より)

私たちが自らの目を開き、自らの手で触れる時、地球は宝箱になり、何でもない日々は瞬く間に宝探しの旅へと姿を変えるのです。

▶︎『センス・オブ・ワンダー』


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