週の始まりに、絵本や漫画、創作に関する書籍などを中心に、楽しく読める1冊をご紹介する本連載。お昼休憩や帰宅後の時間のお供に、はたまたお子さまへの読み聞かせに……。気になる本に出会ったら、ぜひ手に取ってみてください。
じっくり読みたい作品をご紹介していく8月、今週は『なつのおそろいをつくりに』(ブロンズ新社)、『パンダのソフトクリームやさん』(福音館書店)の絵本2本立てです。
『なつのおそろいをつくりに』
石川睦美 文 布川愛子 絵(ブロンズ新社)
1,300円+税 装丁:名久井直子
「おそろい」って、だいすきなひととずーっといっしょにいるみたい!
石井睦美さんと布川愛子さんによる「おようふく絵本」シリーズ、完結となる4作目は夏のお話。森に暮らすうさぎのさきちゃんは、おばあちゃんにもらった素敵な布で仲良しのすりちゃんとおそろいの洋服を作るべく、仕立て屋のミコさんのお店へ向かいます。
2018年から続いてきた「おようふく絵本」シリーズ、完結作となる夏のお話が発売されました。さきちゃんとすりちゃんが過ごす森も、すっかり夏模様です。一面の朝顔畑にひまわり畑、草原に濃い影を落とす木々、そして入道雲を見上げる丘。布川さんの描く夏の風景に、読者の心にも爽やかな風が吹き抜けていきます。
さきちゃんがおばあちゃんにもらったのは、夏の空を思わせる白と水色のしましまの布。仲よしのさきちゃんとすりちゃんに、ミコさんはどんな“おそろい”を作るのでしょうか。大切な人の顔が浮かぶ優しいお話です。
『パンダのソフトクリームやさん』
小川かなこ 作(福音館書店)900円+税
パンダのきょうだい、とんとんくんとらんらんちゃんはソフトクリームやさんです。はちみつのソフトクリームが食べたいと言うくまくんと一緒にはちみつを取りに行きますが、はちの巣は木の高いところにあり届きません。そこで、とんとんくんはお店に繋いだ長いホースから大きなソフトクリームを作りその山をかけのぼっていきますが……。
特大のソフトクリームの山を駆けあがって、高いところにあるハチの巣からハチミツをゲットしよう! という、なんとも大胆で楽しい内容。ユーモアたっぷりなストーリーの持つ魅力が、小川さんの描く気持ちのよい絵で何倍にも膨らんでいくのを感じます。
筆跡もはっきりと見える力強いタッチで描かれた絵に、夏空の突き抜ける青さや山盛りのソフトクリームのきらめきが、目の前に立ち上がって見えてくるよう。おおらかなシナリオと潔い描写の心地よさが、絵本の持つ最大の魅力であると再確認する1冊です。