『illustration FILE 2022』巻頭企画「イラストレーターに聞く“5つの質問”」。そこには、イラストレーターのみなさんの実感を伴った言葉が多数掲載されています。
新型コロナウイルスの影響が色濃く残っていた2022年。日常の在り方が刻一刻と変わっていく中で、イラストレーターの方々は何を考え、感じ、どのように絵と向き合ってていたのでしょうか?
本記事では、掲載された方々の中から編集部が12名をピックアップし、当時の回答をそのまま紹介します。第8回目に登場するのは、キュートさとポップさの中にひとさじのシュールさが加わった作品で人気を博す海道建太さんです。
(連載のまとめはこちらから)
海道建太
名古屋市出身。名古屋造形大学視覚伝達デザインコース卒業。挿絵、書籍装丁、壁面デコレーション等、さまざまな媒体でイラストレーションを手がける。近年は「WELD SUPPLY CO.」と共に毎年コラボアイテムを制作。オリジナルのバスケットボールを制作する等、活動領域を拡大中。
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Q1
「イラストレーション」という言葉の持つ意味合いが多様化する昨今、イラストレーターの仕事をどう捉えていますか? また、イラストレーションに感じる希望や可能性、ご自身が力を入れていることは何ですか?
イラストレーション自体、時代と共にどんどん認識が拡大されていくものだと思います。活躍出来る幅が広がることは喜ばしいと思いつつ、どういう絵を描いていたいかを意識しておかないと絵や活動がブレてしまう怖さも感じています。いままでセパレートされていた分野が重なったように見えても、その認識自体が誤解かもしれません。イラストレーションについてもっと考えないといけないと思いつつ、分析や判断が苦手なのでなかなか難儀しています。とはいえ、思いがけない絵で仕事が出来る可能性があるのは、それなりに楽しめそうだとワクワクしている面もあります。自分にとってイラストレーションは絵の延長線上にあるものなので、絵を疎かにしなければ悪いことにはならないだろうと漠然と考えています。
Q2
仕事や自主制作の時に使用する画材や紙、デバイス、ソフトウェアはどういったものですか?
仕事の際はPhotoshopとIllustrator、Wacom液晶タブレットで描いています。アナログ作品はアクリル絵具とテクニカルペン。デジタル上で制作し、シルクスクリーン印刷で仕上げることも多いです。
Q3
新型コロナウイルスによる日常生活や仕事の変化、影響はありましたか?
展覧会やお店など、外出の機会が減ったためインプットの仕方が変わったように思います。近所を散歩してみたり、家にある本や資料を見たり、身近なものを見直すことが増えました。行動範囲が狭まったせいか、以前よりも素朴で小さなことに魅力を感じています。
Q4
絵を描くときの思考や技術の礎、実作業の時の着想源や資料として利用するものはどんなものですか? また、2021年印象に残ったものは?
絵を描く感覚や、絵が好きという気持ちが思考・技術の礎だと思います。何となくこれでヨシと思うタイミングで手を止めることはなかなか難しいですが、その感度・精度にも影響している気がします。忙しく仕事をしているとつい見失いがちなことなので、忘れないよう大切にしています。資料は古本や置物など。普段からよいと思ったものは買ったり写真に残しているので、それらをザッピング的に見たり触ったりしながらイメージを作ることが多いです。2021年印象に残っていたのは佐々木悟郎さんの展覧会です。技術力と情報量のコントロールに痺れました。ほかにも好きな作家さんの展覧会が多く、目の保養が多い1年でした。
Q5
実際に仕事をする上で気をつけていること、知っていてよかったこと、今後身に付けたい技術や知識は?
要望すべてを受け入れることがいい仕事になるかどうかの判断には気を付けています。餅は餅屋的な考え方なので、各所の意見は柔軟に取り入れつつも、イラストレーターの視点で意見・提案はなるべく素直に伝えるよう心がけています。今後は、アニメーションや、自分の絵と相性のいい媒体の模索、いろいろ興味はありますがとにかく絵が上手になりたいです。
※本記事は『illustration FILE 2022』上巻の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。
『illustration FILE 2022 上巻』(玄光社)
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