和田誠さんの限りない映画愛を感じに 「和田誠 映画の仕事」が国立映画アーカイブ展示室で開催

日本を代表するイラストレーター・グラフィックデザイナーであり、無類の“映画ファン”であった和田誠さん。

そんな和田さんの映画に関するお仕事や自主制作、ご自身のコレクションなどが集結する展覧会「和田誠 映画の仕事」が、国立映画アーカイブ展示室(7階)にて開幕。会期は2024年3月24日(日)まで。

同展では、和田さんの作品やコレクションを、「映画を知った」「映画を描いた」「映画を語った」「映画を集めた」「映画を撮った」の5つに分類し紹介する。

和田誠作「国立近代美術館『アメリカ映画史講座 チャップリンの歩み』」ポスター (1959年) 国立映画アーカイブ所蔵

イラストレーターやグラフィックデザイナーとしてはもちろん、大の映画好きとしても知られ、独自の味わいあるタッチで数多くの映画人のイラストレーションを描いてきた和田さん。グラフィックデザイナーという本職の傍ら、長年にわたり映画ポスターやアニメーション映画の制作にも積極的に取り組み、数多くの映画にまつわる著書や対談集などの出版物も世に送り出した。

和田誠著『お楽しみはこれからだ (Part 1)』(1975年) 国立映画アーカイブ所蔵

さらに、その映画への情熱は留まるところを知らず、1980~90年代にかけて4本の長編娯楽映画を監督。初監督作であり代表作である「麻雀放浪記」(1984年)では脚本も担当した(澤井信一郎さんとの連名)。敗戦後間もない東京を舞台に、博打で身を立てる人々と、麻雀に魅せられ博打の世界に飛び込んでいく少年・哲の生き様をモノクロフィルムで撮影した同作は、公開間も無く数々の賞を受賞し大きな話題を呼んだ。

通例である監督修行を経験せず劇場公開作品の監督を成し遂げ、今なお傑作映画として高い評価を得ているのは、和田さんの映画への類まれな熱意とその知識、クリエイターとしての技量あってこそのものだろう。

『麻雀放浪記』(1984年、和田誠監督) 絵コンテ[複製] 個人蔵 (澤井信一郎氏旧蔵)

また、コレクターとしての一面も持っていた和田さんは、長年に渡りアメリカ映画のフィルムやポスターを集めていた。同展では、和田さんの映画に関するお仕事の他にも、和田さんの膨大なコレクションの数々を実際に見ることが出来る。

和田誠旧蔵『キス・ミー・ケイト』(1953年、ジョージ・シドニー監督) アメリカ版ポスター 国立映画アーカイブ所蔵
和田誠事務所のフィルム収蔵庫 撮影:吉田宏子

少年期から映画への強い情熱を持ち続けながらも、評論家を名乗らず、常に“映画ファン”という立場を貫いた和田さん。お仕事やコレクションを通して、見る人も和田さんの人生の友であった映画への熱意を感じ取るに違いない。ファンの方にはもちろん、広く映画好きの方にも、和田さんの限りない映画への愛を感じに、ぜひ足を運んでいただきたい。

 


トークイベント——《監督・和田誠》を忘れない!

①監督・和田誠の素顔
開催日:2024年1月20日(土)
講師:関口裕子さん(『キネマ旬報』元編集長)
場所:展示室ロビー(7階)

 

②和田誠作品の映画美術
日程:2024年2月10日(土)
講師:小澤秀高さん(「麻雀放浪記」美術助手、「怖がる人々」美術監督)
場所:展示室ロビー(7階)

 

③企画の見どころと展示品解説
日程:2024年3月16日(土)
講師:岡田秀則さん(国立映画アーカイブ主任研究員)
場所:展示室内(7階)

 

※詳細は後日ウェブサイト等にてお知らせ


【和田誠 映画の仕事】

会期:2023年12月12日(火)~2024年3月24日(日)
開館時間:11:00〜18:30
※1月26日(金)・2月23日(金)は11:00〜20:00
※いずれの日も最終入場は閉館の30分前

休館日:月曜日、12月26日(火)〜1月4日(木)

入場料:一般250円、大学生130円

会場:国立映画アーカイブ展示室(7階)

住所:〒104-0031 東京都中央区京橋3-7-6

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