イラストレーターに聞く“5つの質問” 第4回 トヨクラタケルさん

『illustration FILE 2020』の巻頭企画「イラストレーターに聞く“5つの質問”」。そこには、イラストレーターのみなさんの実感の伴った言葉が多数掲載されています。COVID-19の感染拡大によって、さまざまな変化があった2020年。イラストレーターの方々は何を考え、感じ、どのように絵を描いていたのでしょうか?

本記事では、掲載された方々の中から編集部が12名をピックアップし、当時の回答をそのまま紹介します。第4回目に登場するのは、フェルトと紙を使って平面作品やジオラマを制作される、トヨクラタケルさんです。

(連載のまとめはこちらから)

 


トヨクラタケル

オリジナル作品「untitled」

1978年大阪生まれ。フェルトと紙を組み合わせた作品が特徴。近年はジオラマ仕立てにして撮影した作品も制作する。また「Re:VERSE PRODUCTS」としての雑貨のデザインも手がける。その他詳細はWebサイトをご覧下さい。

Web:https://takerutoyokura.com

 

Q1

2020年代のイラストレーションの変容や拡張、 イラストレーターとしての在り方の変化を感じますか? または、現在具体的に自身の活動で力を入れていることは?

SNSの普及でイラストレーターとしての活動を始めやすくなったり、幅広いジャンルのイラストレーションを見る機会が多くなった気がします。そのなかで埋もれていかないように、今後さらに自己プロデュースする力が必要だと感じます。私の場合、企業やデザイナーさんから依頼されるのを待っているだけではやっていけないので、5年前に製造卸するアップリケのメーカー「Re:VERSE PRODUCTS」という活動を始めました。自分でイラストレーションを描いて、製造を外注して、流通に乗せるところまで1人でやっています。

 

Q2

仕事や自主制作の時に使用する画材や紙、デバイス、ソフトウェアはどういったものですか?

アイデアラフは紙と鉛筆で描きます。その後、鉛筆で個別にモチーフを描いていき、スキャンしてPCのIllustrator上でパスにして色つけと構図を決めます。構図、色、配置までかっちり決めたあと、プリンターで 型紙を出力して、型紙の線に沿ってフェルトと紙を切っていきます。最後にボンドで貼りつけて完成。ジオラマ風イラストレーションの場合は、フェルト人形を作ったあと、スタジオで並べてカメラで一発撮りします。

 

Q3

イラストレーションや絵画、デザイン、写真、映像などの視覚表現で、2019年印象に残ったものは?

大阪の国立国際美術館で観た「クリスチャン・ ボルタンスキー展」が特に印象に残っています。映像、インスタレーション、立体と表現の仕方はさまざまでしたが、感じるものが多かったです。ART OSAKAでは久々に観た福田尚代さんの消しゴム彫刻の作品に小さな 宇宙を感じました。あと森美術館での「塩田千春展」、東京オペラシティアートギャラリーでの「ジュリアン・オピー展」、原美術館での「加藤泉展」も印象に残っています。

 

Q4

絵を描く時の思考や技術の礎、実作業の時の着想源や資料として利用するものはどんなものですか?

イラストレーションに関しては、相手の意向を汲んだ上で、お客さんにどう見えるかを中心に考えて描いています。自分の絵(作品)の場合は新聞やニュースなどの時事ネタから受ける衝撃や疑問が描く動機になっています。想像で描く場合は少なく、資料としてインターネットの画像や図鑑を参考にするなど、必ず1度は 資料を見て確認しながら描くことが多いです。

 

Q5

仕事をするなかで気をつけていること、知っていてよかったこと、今後身につけたい技術や知識は?

イラストレーションの仕事をする上では、相手の意図を汲み取って上手くお客さんに伝わるかということを考えます。自分目線ではなく、お客さん目線の客観性を特に意識します。また、1人メーカーを始めたおかげで、どうやって商品が流通されるのか、バイヤーさんがどういった目線で商品を選び並べるのかも少しわかったので、それは今後プロダクトのイラストレーションを描く上では役立つと思います。

 


※本記事は『illustration FILE 2020 下巻』の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承下さい。

『illustration FILE 2020 下巻』(玄光社)


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