『illustration FILE 2022』巻頭企画「イラストレーターに聞く“5つの質問”」。そこには、イラストレーターのみなさんの実感を伴った言葉が多数掲載されています。新型コロナウイルスの影響が色濃く残っていた2022年。日常の在り方が刻一刻と変わっていく中で、イラストレーターの方々は何を考え、感じ、どのように絵と向き合ってていたのでしょうか?
本記事では、掲載された方々の中から編集部が12名をピックアップし、当時の回答をそのまま紹介します。第9回目に登場するのは、繊細でありながらノスタルジーを感じさせるタッチで人物を描き、書籍装画や広告を中心に活躍する合田里美さんです。
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合田里美
1984年兵庫県出身。MJイラストレーションズ修了。2016年東京装画賞金賞。2018年ペーターズギャラリーコンペ峰岸達賞次点。主な仕事は書籍装画、文芸誌や雑誌の挿絵、広告等。アクリルガッシュで制作。
Instagram @goudasatomi
X(旧Twitter)@gouda_s33
Q1
「イラストレーション」という言葉の持つ意味合いが多様化する昨今、イラストレーターの仕事をどう捉えていますか? また、イラストレーションに感じる希望や可能性、ご自身が力を入れていることは何ですか?
以前に比べて装画や広告などでさまざまな作風のイラストレーションが起用されており、SNSで触れる機会も多いので楽しく拝見し、同時に刺激も受けています。
自分の作風は大切にしつつ、さまざまな作品からの刺激や時代の空気感を吸収して小さな変化を続けながら仕事をしていきたいです。昨年は特に仕事でご一緒する皆さまのアドバイスを取り入れ形にしていく先に、自分の絵の新たな可能性が生まれていったように感じています。
Q2
仕事や自主制作の時に使用する画材や紙、デバイス、ソフトウェアはどういったものですか?
ラフは100円ショップのらくがき帳やコピー用紙にシャープペンシルとねり消しで描いています。本番はラフをホワイトワトソン紙にトレースして、アクリルガッシュで着彩しています。仕事では原画を送付、またはスキャンしPhotoshopで色味などを調整し、データ納品しています。
Q3
新型コロナウイルスによる日常生活や仕事の変化、影響はありましたか?
以前から家に籠って制作する生活だったので意外と大きな変化はありませんが、健康のために近所を散歩しています。気分転換はもちろん、新たな絵のアイデアが浮かんだり絵の資料になりそうな景色をスマホで撮影したりして小さな喜びを積み重ねています。ただ、都内のギャラリーに伺う機会が減ってしまったことがとても残念です。
Q4
絵を描くときの思考や技術の礎、実作業の時の着想源や資料として利用するものはどんなものですか? また、2021年印象に残ったものは?
一からイラストレーションを学んだMJイラストレーションズでの先生の教えや生徒の皆さんから学んだことがいま制作する上での礎になっています。制作中は学んだことが常に頭の中にあるような気がします。また、InstagramやPinterest、散歩の途中で印象に残った空や景色を撮影した画像を資料にしてイメージを膨らませたり、時々伊東深水や鏑木清方の画集を見たりして、参考にしています。
Q5
実際に仕事をする上で気をつけていること、知っていてよかったこと、今後身に付けたい技術や知識は?
描く対象の資料を集め、自分なりに構造などを理解して描くようにしています。日頃から街ゆく人々の髪型や服装をチェックしたり、刻々と変化する時代の空気感や価値観に少しでも触れたりして、自分のフィルターをとおして描くことを大切にしていきたいです。人と直接会って話す機会が減ったいま、SNSやテレビなどの意見すべてを受け入れるのではなく自分の思いや考えも大切にし、フラットな自分でいられたらと思います。技術面ではほぼすべての工程がアナログなので、デジタルツールをもう少し取り入れられたらと考えています。
※本記事は『illustration FILE 2022』上巻の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。