読書だより:第8号『レタイトナイト(1)』

週の始まりに、絵本や漫画、創作に関する書籍などを中心に、楽しく読める1冊をご紹介する本連載。お昼休憩や帰宅後の時間のお供に、はたまたお子さまへの読み聞かせに……。気になる本に出会ったら、ぜひ手に取ってみてください。

「旅と冒険」をテーマに進めてきた7月、今週ご紹介するのは『レタイトナイト(1)』(トゥーヴァージンズ)です。

 


『レタイトナイト(1)』

香山哲 著(トゥーヴァージンズ)

900円+税 装丁:鈴木学

海に挟まれた土地に位置する4つの国。その北方の国“レタイト”に住む少年・カンカンは、苦しくなっていく集落での生活に疑問を感じていました。

外の世界で新たな知見を得ることを望んだカンカンは家を出るも、計画はあえなく失敗。再出発の準備をしていましたが、そうこうしているうちに親戚のマルおじさんが先に旅に出てしまい……?

生きるための旅に出よう。力を持たざる者たちの「居場所発見」ファンタジー、開幕!

ページを開いてまず驚くのが、コマから溢れんばかりの情報量。RPGのマップを想起させる緻密に描きこまれた画面に、これから始まる冒険ファンタジーへの期待が膨らみます。しかし、想像とは一味違うのがこの作品。1巻で中心に描かれるのは、主人公・カンカンの親戚のマルおじさんの旅路です。

旅に出たマルおじさんは相棒のカメ・トスと共に歩き土地から土地へ、その時々で職を得ながら地道に進んでいきます。生きること、すなわち働き、食べ、眠ること。そして暮らしの中に訪れる小さな変化を掬い取り楽しむこと。仕事に追われ同じように過ぎていく日々に焦りつつ、「定食(マリム)だけは毎日違っていた‼︎」と笑顔のマルおじさんに、現代社会に生きる多くの人が共感を覚えるでしょう。

剣と魔法の世界で、目的のために進み、進むために働く登場人物たち。マルおじさんの行く先はもちろん、これから始まるカンカンの冒険、そして2人がどんな「居場所」を発見するのか、それを目撃するのが楽しみです。

※ウェブサイト「路草」では、1〜4話が公開されています(コミックスは14話まで収録)。

▶︎『レタイトナイト(1)』


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