イラストレーターに聞く“5つの質問” 第5回 大津萌乃さん

『illustration FILE 2022』巻頭企画「イラストレーターに聞く“5つの質問”」。そこには、イラストレーターのみなさんの実感を伴った言葉が多数掲載されています。

新型コロナウイルスの影響が色濃く残っていた2022年。日常の在り方が刻一刻と変わっていく中で、イラストレーターの方々は何を考え、感じ、どのように絵と向き合っていたのでしょうか?

本記事では、掲載された方々の中から編集部が12名をピックアップし、当時の回答をそのまま紹介します。第5回目に登場するのは、シンプルな線と爽やかな色使いで個性的なモチーフを描き、装画やパッケージデザインで活躍する大津萌乃さんです。

(連載のまとめはこちらから)

 


大津萌乃

オリジナル作品「葉」

茨城県出身。多摩美術大学卒業。書籍の装画・挿絵、広告、Web等の仕事を手がけています。滑らかで気持ちのいい線が好きです。

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Q1

「イラストレーション」という言葉の持つ意味合いが多様化する昨今、イラストレーターの仕事をどう捉えていますか? また、イラストレーションに感じる希望や可能性、ご自身が力を入れていることは何ですか?

アニメ・漫画表現の流れを汲むイラストレーションが従来の商業イラストレーションからどことなく距離を置かれていましたが、この数年でそういった溝が埋まってきたように感じます。自分自身アニメ・漫画から影響を受けているのでうれしいですし、作風の多様性は業界の豊かさに繋がるのでよい流れではないでしょうか。イラストレーターはクライアントの意図を翻訳し可視化する仕事なので、やはりどう噛み砕き表現するかを考えるのがこの仕事の面白いところです。

 

Q2

仕事や自主制作の時に使用する画材や紙、デバイス、ソフトウェアはどういったものですか?

【ラフ】デジタル:iPad Pro、Procreate。【本書】アナログ:証券用インク、アクリリック、カラーインク、アクリル絵具(展示の絵でたまに)。デジタル:iPad Pro、MacBook Pro、Procreate、Photoshop、Clip Studio。

 

Q3

新型コロナウイルスによる日常生活や仕事の変化、影響はありましたか?

コロナにより失った案件は幸いありませんが、舞台・イベント関係の仕事をしてみたいので、なかなか機会がなく残念です。臆病な性格もあり、外出は極端に減りました。展覧会や旅行で得ていたインプットの代わりに、家の中や近所、インターネットから情報を拾っています。もともと家に籠っているタイプなので外出自粛はそれほど苦でないのですが、ずっと家にいることで逆に外に関心が向き、状況が落ち着いた時は積極的に外に出るようになりました。これは自分にとってプラスの変化だったと思います。

 

Q4

絵を描くときの思考や技術の礎、実作業の時の着想源や資料として利用するものはどんなものですか? また、2021年印象に残ったものは?

クライアントワークでの考え方はQ5への回答でも述べますが、デザイン事務所に勤めていた時の経験が役に立っています。着想源は家の中での生活や記憶の中の風景、変わった服などバラバラで、すぐ絵に活かすのは難しそうでも面白いと思ったものはメモや写真でストックしています。服は特に関心があるので系統・パーツなど細かく分類して保存しています。昨年秋に大阪で展示をした際、少し足を延ばして京都・伊根の海を見に行きました。静かで幻のように美しい水でした。あの海を絵に出来たらとずっと考えています。

 

Q5

実際に仕事をする上で気をつけていること、知っていてよかったこと、今後身に付けたい技術や知識は?

デザイナー時代に上司から言われた「クライアントの言葉を鵜呑みにせず真に表現したいことを汲み取ること、そのためには時として要求をはねのけ異なる形を提示する勇気も必要」という言葉を常に頭に置いて仕事をしています。技術面では建築や風景など人以外も積極的に描いて画力を付けたい。依頼・アートワーク共に人が多いため、幅を広げたいと思っています。描けるものが増えるのは楽しいですし! 絵とは直接関係ないですが、めっきり本を読まなくなったので読書をしたいです。知識不足を感じる場面が多々あります。

 


※本記事は『illustration FILE 2022』上巻の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

 

『illustration FILE 2022 上巻』(玄光社)


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