令和版 駆け出しクリエイターのためのお金と確定申告Q&A(第6回・機材を購入して節税できるって本当?)

税金や確定申告って、必要なことだけど何だか難しそう。一体、どこから手を付けたらいいの……? そう思って、漠然とした不安を抱えている人も多いはず。

本記事では、書籍『令和版 駆け出しクリエイターのためのお金と確定申告Q&A』(桑原清幸著)から、クリエイターのみなさんのお金にまつわるQ&Aを厳選して紹介。基本的な疑問、実践的な質問などを実例で分かりやすく解説します。第6回は、気になる節税対策についてです。

(全7回・連載のまとめはこちらから)

 

機材を購入して節税できるって本当?

Q:
1年間の事業所得を計算してみたら、予想以上に黒字になりそうです。もうすぐ年末ですが、節税のために、何かできることはありますか?
A:
年内ならば、仕事に必要なものを購入して経費を増やすことです。年を越したら手遅れになるものもあるので、早めに事業所得を試算してみましょう。

 

 年内にできる節税として、まず検討したいのは、経費を増やすことです。

 カメラやレンズなどの機材や、パソコンやペンタブレットなど、そろそろ買い換えたいなあ、というものがあれば、年内に購入してしまいましょう。青色申告をしている方は、「少額減価償却資産の特例」の恩典により、30万円未満だったら経費に入れられます。ただし、年間で合計300万円までです。

 一方で、30万円以上のものを買うと「固定資産」にしなければならず、一括して経費に入れられません。年末に高いものを買っても、節税にならないのです。例えば、30万円以上するカメラを、慌てて12月に買ったとします。カメラは耐用年数が5年(60カ月)で減価償却をしていきますが、12月から使い始めたことになるので、月割でたった1カ月分、つまり購入金額の60分の1しか経費に入れることができません。これだと、何のために慌てて買ったの? という結果になりますから、高い買い物は慎重に検討しましょう。

 また、年末ぎりぎりに買った場合も要注意です。例えば、12月30日にネット通販で注文したとしても、納品が翌年の1月1日になると、今年の経費にはできません。今年の経費にするためには、12月31日までに納品されて、かつ、実際に仕事で使い始めなければ、認められないのです。微妙なタイミングのものは、納品書をきちんと保管しておくようにしましょう。

 そして、在庫もダメです。例えば、自分がデザインしたグッズなどの販売をしている方は、儲かっているからといって、年末に慌てて商品を大量に仕入れたとしても、売れた時まで経費にできません。年末に売れ残っていれば、そのまま在庫として棚卸資産に計上されるだけです。

 こうした節税の話をすると、よく勘違いされるのですが、黒字を減らすために、必要がないものまで買ってしまうのは、本末転倒です。何かを買って経費にするということは、税率が20%(所得税10%+住民税10%)だとすると、その分の税金が安くなるので、結果として20%引きで購入しているようなものです。

 「割引セールで全品20%引き」と聞くと、ついつい要らないものまで買ってしまいませんか? 無駄なものを買ってしまうと、税金は安くなっても、残り80%のお金は出ていってしまいます。税金を減らすこと自体が目的になってしまうと、ビジネスの本質を見誤ってしまいますので、十分注意してくださいね。

 

▶︎第5回(家賃や光熱費も経費にできる?)

▶︎第7回(赤字になったときにやっておくべきこととは?)

 


『令和版 駆け出しクリエイターのためのお金と確定申告Q&A』

「所得控除を増やして節税する方法とは?」「医療費が節税につながるって本当?」など、節税のコツを多数ご紹介しています。

<プロフィール>

くわばらきよゆき/1972 年群馬県渋川市生まれ。桑原清幸会計事務所代表。税理士・公認会計士。上智大学在学中に公認会計士試験に合格。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。大手会計事務所で 20年間勤務したのち、独立開業。会計事務所とアートを融合したギャラリーKKAG(Kiyoyuki Kuwabara Accounting Gallery)を設立。クリエイター向けの独立開業、会社設立、確定申告等を中心とした税務・経営アドバイザリー業務を行い、会計専門家の立場からアートビジネスの発展を支えている。趣味はライカカメラ収集。写真の暗室作業の他、秘湯スタンプ集め、日本酒立ち飲み屋巡りなど。

ウェブサイト(kkag.jp

 


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