税金や確定申告って、必要なことだけど何だか難しそう。一体、どこから手を付けたらいいの……? そう思って、漠然とした不安を抱えている人も多いはず。
本記事では、書籍『令和版 駆け出しクリエイターのためのお金と確定申告Q&A』(桑原清幸著)から、クリエイターのみなさんのお金にまつわるQ&Aを厳選して紹介。基本的な疑問、実践的な質問などを実例で分かりやすく解説します。
第5回は、どこまでが経費?気になる線引きについてご紹介します。
(全7回・連載のまとめはこちらから)
自宅で仕事をしている場合、家賃や光熱費も経費にできる?
私は、自宅を事務所としていて、家で仕事をすることが多いです。賃貸アパートなのですが、家賃や光熱費も経費にできると聞きました。どこまで経費にできますか?
クリエイターの方は、自宅で仕事をする方が多いと思います。個人事業主は、自宅の家賃や水道光熱費も、経費に入れることができます。ただし、全額ではなく、プライベートで使う部分と仕事で使う部分を何らかの比率で分けたうえで、仕事に関する部分だけを経費に入れます。これを「家事按分」といいます。
最初に、自宅に関係する費用をピックアップすることから始めましょう。賃貸物件の場合を前提とすると、以下のような費用があります。
・ 火災保険料、地震保険料
・ 水道光熱費(電気、ガス、水道など)
・ 通信費(電話代、携帯電話代、インターネット利用料など)
これらの領収書や料金明細など、金額を証明する資料を集めて、費目ごとに、年間の合計額を集計しましょう。
次に、「家事按分」をします。まずは家賃です。例として、借りているアパートのうち1部屋を仕事部屋として使っているとしましょう。全体の床面積が30m²で、仕事で使う部屋が10m²だったとすると、家賃のうち3分の1を仕事で使う部分とみなして、「地代家賃」として経費に入れることができます。厳密にメジャーで測って計算しなくても、だいたい3分の1程度というくらいでも結構です。共益費や火災保険料も、この按分方法で大丈夫です。ただし、敷金や保証金は経費にできません。後で返金されるからです。
次に、水道光熱費や通信費は、使用割合で按分します。とはいえ、これも厳密に計算するのは難しいと思います。例えば、電話代であれば通話時間で按分するとか、電気代であれば、 使っている電気製品の数や、コンセントの数など、何らかの割合で按分します。ただし、正解はありません。税務署に聞かれたときに、納得してもらえそうな根拠を考えて、按分するしかありません。この 家事按分は、ケースバイケースで、グレーゾーンが広く、白黒つけられないところ なので、悩ましいときは税務署や税理士に相談しましょう。
なお、自宅とは別に、仕事専用の事務所やスタジオを借りている場合は簡単です。100%仕事で使っているのであれば、関係する費用は、全額経費に入れることができます。
また、自家用車を仕事に使っている場合も按分できます。車の減価償却費や、ガソリン代、駐車場代、車検代、自動車税、自動車保険料などの関連費用を、使用割合で按分します。例えば、週のうち何日仕事で使うかどうかや、走行距離などで按分します。
自宅が持ち家の場合も家事按分できますが、自宅の建物の減価償却費や住宅ローンの利息部分など、計算が複雑なので、税務署や税理士に相談することをおすすめします。
<プロフィール>
くわばらきよゆき/1972 年群馬県渋川市生まれ。桑原清幸会計事務所代表。税理士・公認会計士。上智大学在学中に公認会計士試験に合格。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。大手会計事務所で 20年間勤務したのち、独立開業。会計事務所とアートを融合したギャラリーKKAG(Kiyoyuki Kuwabara Accounting Gallery)を設立。クリエイター向けの独立開業、会社設立、確定申告等を中心とした税務・経営アドバイザリー業務を行い、会計専門家の立場からアートビジネスの発展を支えている。趣味はライカカメラ収集。写真の暗室作業の他、秘湯スタンプ集め、日本酒立ち飲み屋巡りなど。
ウェブサイト(kkag.jp)
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