駆け出しクリエイターのための著作権Q&A(第3回・仕事の進め方と約束の作り方)

あなたの作品は大丈夫…?時間をかけて作ったものを無断盗用されたり、 はたまた知らずに著作権を侵害していたり…。トラブルに巻き込まれないためにも、最低限の知識は身につけておきたいものです。

本記事では、書籍駆け出しクリエイターのための著作権Q&A』(川上大雅著)から、クリエイターのよくあるトラブルの事例と回避策をご紹介。権利や契約、お金の話をやわらかく、少しかみ砕いて解説します。第3回のテーマはトラブルを未然に防ぐ「仕事の進め方」です。

(連載のまとめはこちらから)

 

仕事の進め方と約束の作り方

 「仕事のメニュー」(何ができて、いくらかかるのか)を作ったら、仕事の進め方についても、あらかじめ決めておくとよいでしょう。

 また、こういう風に決まったという仕事について、どう「約束」として残していくか。そして約束が守られていない場合、どういう方法を取ることにするのか考えておく必要があります。

 ポイントを何点か示しておきますから、こうしたポイントを踏まえながら、仕事の進め方を考えていきましょう。

 

1 代金をもらうタイミングを決めよう

 代金が決まっていても、もらうタイミングが決まっていないという話が当たり前のようにあります。

 もちろん、制作者の側からすると、先払いで処理をする場合のほうが安心して仕事ができますが、そうもいかない場合が多いのが現状です。

 着手金、手付金、名称は何でもいいのですが、初めに一部もらうお金を設定しておくと、守られていない場合の対処がうまくいきますし、最低限のリスク回避もできます。

 他方で、お金をもらう以上はちゃんとしなきゃいけないので、こちらにかかってくる責任も増してきます。ここは理解しておきましょう。

 

2 「使える成果物」をいつ渡すのか決めておこう

 成果物についても、途中の段階で都度確認をしてもらいながら進めていくことがありますが、途中の段階でも「使える状態のもの」を渡してしまって、何もお金をもらわないまま、逃げられたなんていう、詐欺のような話も残念ながらあります。使える成果物を渡すタイミングを決めておきましょう。

 また、「マスターデータは最後まで渡さない」「解像度は調整する」「透かしを入れる」。このあたりのひと手間をかけるだけで、トラブルが回避できることがあります。

 

3 何らかの書面、やり取りを残しておく

 理想としては、契約書に近いものを残しておく必要がありますし、こちら側からの意思表示もしておく必要があります。

 何らかの書類があれば何とかなったのに……という事案がとても多いので、契約書、覚書、名称は何でもいいので、何らかの書面を残す工夫をしましょう。

 また、そうでなくとも、メール、ライン、メッセンジャー等で、制作に関する条件を双方で合意しておきましょう。

 


駆け出しクリエイターのための著作権Q&A』(川上大雅著)
「意外と」と言っていいのか、「全然」と言っていいのか、権利の話は避けて通ってきている人が多いでしょうし、契約やお金の話はさらに苦手で極力避けてきている人が多いのではないでしょうか。

本書は、そんなあなたに、著作権をはじめとする権利を少しやわらかく、契約やお金の話についても毛嫌いしないためのきっかけを与えるものです。巻末には、権利関係でもめないための7つの契約書ひな形を掲載。

<プロフィール>

かわかみたいが/弁護士・弁理士。

1980年、札幌生まれ。2008年に弁護士登録。札幌市内の事務所にて勤務。2010年にギャラリー「salon cojica」を開廊。2014年「札幌北商標法律事務所」開所、同所にギャラリーsalon cojicaを移転し、現在に至る。美術と法律のあいだで、様々な側面からクリエイターを支えている。近年の関わりとして「なえぼのアートスタジオ」「geidaiRAM」などがある。

https://www.satsukita-law.jp/
https://www.salon-cojica.com/

 

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