駆け出しクリエイターのための著作権Q&A(第2回・有名人に似ているキャラクターイラストを作成してもいい?)

あなたの作品は大丈夫…?時間をかけて作ったものを無断盗用されたり、 はたまた知らずに著作権を侵害していたり…。トラブルに巻き込まれないためにも、最低限の知識は身につけておきたいものです。

本記事では、書籍駆け出しクリエイターのための著作権Q&A』(川上大雅著)から、クリエイターのよくあるトラブルの事例と回避策をご紹介。権利や契約、お金の話をやわらかく、少しかみ砕いて解説します。第2回のテーマは「キャラクターイラスト」についてのよくある事例です。

(連載のまとめはこちらから)

 

Q.有名人に似ているキャラクターイラストを作成してもいい?

 有名人になんか似ているキャラクターのイラストを作ることがあります。

 白ブリーフ1枚の〝ちゃんとはいている〟イラストや、赤ジャージと青ジャージで片方がギターを持っているイラスト、タライ1枚で人物が踊っているイラストなど、こうしたイラストに何か問題はあるのでしょうか。

 

法の解釈を含む説明

 キャラクターを描いたイラストは、絵画の著作物に該当することになります。

 他方で、そのイラストが有名人に似ているからと言って、その有名人自体が著作物にあたるわけではないので、イラスト自体が何らかの著作権法違反となることは原則ないでしょう。

 ただし、「肖像権・パブリシティ権」について検討しておく必要があります。

 肖像権・パブリシティ権というのは、明文の法律があるものではありませんが、著名人のアイデンティティ情報に一定の価値を認めるものです。

 このパブリシティ権の考え方としては、肖像それ自体を鑑賞の対象とする場合、また名前そのものを使う場合などにパブリシティ権の侵害を認める方向にあります。

 とすると、有名人と造形を似せたキャラクターイラストについて、ただちにそのイラスト自体が何らかの権利侵害に該当することはありませんが、名前やいろいろなものと相まって権利侵害となる場合がないとは言えないということにはなります。

 また、対象有名人が何らかのグッズ販売をしていて、そのグッズにイラストが載っているということはままあります。このイラストと描いたイラストが似てしまったら、これは著作権侵害になりえますから、このあたりの留意は必要になります。

 

注意すべきポイント

 イラスト自体を書くことは問題がなさそう。

 ただ、対象の有名人が販売しているグッズ等のデフォルメされたイメージが存在していないかどうか、ここはあらかじめ調べておく必要があります。

 

A.OK!

ただ、関連グッズをあらかじめ調べたり、肖像権に配慮したりしよう

 

▶︎第1回(写真をもとにトレースしたイラストを商用利用してもいい?)

▶︎第3回(仕事の進め方と約束の作り方)

 


駆け出しクリエイターのための著作権Q&A』(川上大雅著)
「意外と」と言っていいのか、「全然」と言っていいのか、権利の話は避けて通ってきている人が多いでしょうし、契約やお金の話はさらに苦手で極力避けてきている人が多いのではないでしょうか。

本書は、そんなあなたに、著作権をはじめとする権利を少しやわらかく、契約やお金の話についても毛嫌いしないためのきっかけを与えるものです。巻末には、権利関係でもめないための7つの契約書ひな形を掲載。

<プロフィール>

かわかみたいが/弁護士・弁理士。

1980年、札幌生まれ。2008年に弁護士登録。札幌市内の事務所にて勤務。2010年にギャラリー「salon cojica」を開廊。2014年「札幌北商標法律事務所」開所、同所にギャラリーsalon cojicaを移転し、現在に至る。美術と法律のあいだで、様々な側面からクリエイターを支えている。近年の関わりとして「なえぼのアートスタジオ」「geidaiRAM」などがある。

https://www.satsukita-law.jp/
https://www.salon-cojica.com/

 

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