【展覧会レポート】「和田誠展」東京オペラシティ アートギャラリーで開幕

知っているようで知らなかった和田誠さんを紐解く展覧会「和田誠展」が2021年10月9日、東京オペラシティ アートギャラリーで開幕した。

本展では、代表作を中心としたビジュアル年表や、約30のトピックスを軸に、およそ2800点の作品や資料を展示。幼少期に描いたスケッチから晩年の仕事まで、和田さんの膨大で多岐にわたる創作活動の全貌に迫る初めての試みとなっている。

会場には「似顔絵」「絵本」「漫画」など、和田さんの仕事を振り返る上で欠かせないトピックスに沿って、多くの原画や書籍、作品が並ぶ。
入り口でまず目に入ってくる「似顔絵」の展示では、さまざまなジャンルの著名人を描いた作品を、迫力のある大型出力で振り返る。
見応えのある「絵本」の展示。多くの絵本をともに制作した、谷川俊太郎さんとの仕事を紹介するコーナーも。
「ひとコマ漫画」もトピックの1つ。意外な展開やアイデアのあるオチが1枚の絵に凝縮され、ブラックユーモアも取り入れられている。

また、和田さんの創作の源流をたどることが出来るのも本展の見どころの1つだ。幼少~高校生時代に描いた絵物語や漫画、大学生時代のポスター作品、大学卒業後に入社した広告制作会社での仕事などを、貴重な資料とともに振り返る。

幼少から絵を描くことが好きだったという和田さん。4歳の頃に描いた絵物語や小学生の時の詩集なども展示される。

多摩美術大学在学中に制作したLPジャケットや日本宣伝美術会賞を受賞したポスター「夜のマルグリット」なども紹介。

展示の後半では、長年続いたロングランの仕事や、音楽、劇場、映画、広告など幅広く制作されたポスターなどが集結し、その膨大な仕事量を実感することが出来る。さらに映画の脚本や絵コンテ、エッセイやアニメーション作品など、多彩な作品を紹介するコーナーにも注目だ。

40年以上に渡り2000号分を制作された『週刊文春』の表紙を一挙公開。
約9年間無償で制作したという新宿日活名画座のポスターや、60年代に制作に関わった草月アートセンターの公演ポスターなども壁一面に展示。

誰もが知っているようで、実は知らなかった、和田さんの膨大な仕事に触れるかつてない展覧会。その作品の量と質に思わず圧倒されてしまうはず。2022年からは熊本、新潟(調整中)、福岡、愛知で巡回展も予定されているので、お近くの会場へぜひ足を運びたい。

520ページの大ボリュームで作品を紹介する公式図録(10月16日発売)や、大充実のグッズもチェックしたい。

 

〈プロフィール〉和田誠/1936年大阪に生まれる。多摩美術大学図案科(現・グラフィックデザイン学科)を卒業後、広告制作会社ライトパブリシティに入社。1968年に独立し、イラストレーター、グラフィックデザイナーとしてだけでなく、映画監督、エッセイ、作詞・作曲など幅広い分野で活躍した。たばこ「ハイライト」 のデザインや「週刊文春」の表紙イラストレーション、谷川俊太郎との絵本や星新一、丸谷才一など数多くの作家の挿絵や装丁などで知られる。報知映画賞新人賞、ブルーリボン賞、文藝春秋漫画賞、菊池寛賞、毎日デザイン賞、講談社エッセイ賞など、各分野で数多く受賞している。

 


「和田誠展」

会期:2021年10月9日(土)〜12月19日(日) *月休

会場:東京オペラシティ アートギャラリー

住所:東京都新宿区西新宿3-20-2

時間:11:00〜19:00 *入場は18:30まで

入場料:一般 1,200(1,000)円 /大・高生800(600)円/中学生以下無料

*()内は各種割引料金。障害者手帳をお持ちの方および付添1名は無料。割引の併用および入場料
の払い戻しは出来ません。

Webサイト:https://wadamakototen.jp

 


 

『表紙はうたう 完全版 和田誠・「週刊文春」のカヴァー・イラストレーション』(文藝春秋)

 

『イラストレーション』 No.226(玄光社)

和田誠さんを70ページにわたって特集。『週刊文春』の表紙をはじめとした代表的な仕事の紹介はもちろん、親交のあった方々からの寄稿、オマージュイラストなど盛りだくさんの内容です。

 

『定本 和田誠 時間旅行』(玄光社)

2000年に刊行された和田誠さんの作品集『時間旅行』をベースに、装丁カテゴリーや制作風景を加え、さらにこの後の20年弱の代表的な仕事を盛り込んだ増補改訂版です。4歳から82歳までの和田誠が見られる、ほかに類を見ないオールタイムベストとも言える1冊。

 


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