世界的な絵本作家の知られざる一面。「だれも知らないレオ・レオーニ展」が板橋区立美術館で開幕

展示会場内、中央の間にある「平行植物」のブロンズ彫刻作品。

新型コロナウイルスの影響により延期されていた、東京・板橋区立美術館の「だれも知らないレオ・レオーニ展」が遂に幕を開けた。

小さな黒いさかなの『スイミー』、詩人のねずみ『フレデリック』などの絵本でよく知られるレオ・レオーニ氏は、実は絵本だけでなく、数多くのグラフィックデザインやイラストレーション、アート、彫刻作品を残した。
同展では人気の高い絵本原画はもちろん、油画やドローイング、政治風刺のイラストレーション、制作のためのスケッチなど、今回初公開となる作品を含めて展示し、氏の知られざる多面的な魅力を紹介する。

展示会場を入ってすぐの場所には、80歳を超えて描いた自伝的作品「黒いテーブル」シリーズと、絵本『フレデリック』の原画が飾られている。
「平行植物」のシリーズでは、ブロンズ彫刻のほか、油画や鉛筆画など多数の作品を見ることが出来る。

1910年アムステルダムでユダヤ系の父とオランダ人の母の間に生まれたレオーニ氏は、幼い時からヨーロッパ各地とアメリカを転々としながら成長した。1930年代半ばより、ミラノでグラフィックデザインの仕事を始めるが、ファシズムの台頭により第二次世界大戦直前にアメリカへと亡命。その後、MoMA(ニューヨーク近代美術館)やオリヴェッティの広告、ビジネス雑誌『Fortune』などの仕事を手がけ、アートディレクター、グラフィックデザイナーとして成功する。

アートディレクターとして携わっていた、ビジネス雑誌『Fortune』の仕事。
1955年にMoMAで開催されたかの有名な『The Family of Man(人間家族)』の展覧会ビジュアルも、実は氏が手がけている。

そして、1959年。49歳の時に初の絵本『あおくんときいろちゃん(Little Blue and Little Yellow)』を出版した。それ期に彼は徐々に広告の仕事から退き、年に1冊のペースで絵本を制作しながら、油画、彫刻、版画などの創作に没頭するようになる。

絵本の制作をはじめてから晩年までの作品、初期のタブロー、長年にわたって描かれた「想像肖像」と名付けられた油画シリーズ、実物を見ずに本物そっくりに描く鉛筆細密画など多種多様な足跡を辿ることで、彼の芸術家としての人生を垣間見ることが出来るはずだ。

最後のタブローシリーズとなった「鳥」のインスタレーション作品。
政治風刺のイラストレーション。左の絵にはヒトラーへの憎悪が感じられる。

また、氏には戦争や人種差別に反対し、平和を訴え政治活動に参加する一面もあった。芸術家の社会的な役割を意識し、葛藤のなかで自分の道を模索する姿には、きっと多くの表現者が励まされるに違いない。

これまで公開されることのなかった多数の作品をとおして、世界的な絵本作家が歩んだ軌跡、その知られざる魅力をぜひ堪能して欲しい。

 

<展覧会情報>

「だれも知らないレオ・レオーニ展」

会期:開催中~2021年1月11日(月・祝)

時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)

会場:板橋区立美術館

休館日:月曜日・年末年始(11月23日、1月11日は祝日のため開館。11月24日、12月28日~1月4日休館。)

Webサイト:https://www.city.itabashi.tokyo.jp/artmuseum/4000016/4001385/400世界的な絵本作家が歩んだ軌跡、1386.html

*入場には、オンライン予約が必要です(ただし、上限に達していない場合には当日入場も可能)。

<書籍情報>

『だれも知らないレオ・レオーニ』(玄光社)

 


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