イラストレーターに聞く“5つの質問”  第12回森井ユカさん

『illustration FILE 2021』巻頭企画「イラストレーターに聞く“5つの質問”」。そこには、イラストレーターのみなさんの実感を伴った言葉が多数掲載されています。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、混乱が日常となっていった2021年。イラストレーターの方々は何を考え、感じ、どのように絵と向き合ってていたのでしょうか?
本記事では、掲載された方々の中から編集部が12名をピックアップし、当時の回答をそのまま紹介します。最終回に登場するのは、立体造形家として粘土を使ったキャラクターデザインやプロダクトを手がけるほか、雑貨コレクターとしての顔も持ち、多くの書籍を出版するなど、ジャンルレスに活躍する森井ユカさんです。

(連載のまとめはこちらから)

 


森井ユカ

オリジナル作品「47都道府県の妖怪シリーズ 長野県 だいだらぼっち」

桑沢デザイン研究所卒業、東京造形大学大学院修了。立体造形、キャラクターデザイン。プロダクトデザインに「ネコカップ」「コネコカップ」(アッシュコンセプト)。著書多数。ポケモンカード公認イラストレーター。(有)ユカデザイン代表。

ウェブサイト:http://www.yuka-design.com

Q1

イラストレーションという言葉が多様化する昨今、今後のイラストレーターとしての方向性やイラストレーションの可能性をどのように考え、活動していますか?

私が手がけるものは立体造形としてのアナログなイラストレーションが多いのですが、(形がシンプルであっても)より多くの情報量を意識して制作しています。例えば見えないけど背中まで作れば、それが全体の雰囲気を大きく左右することもあります。現在、専門学校(桑沢デザイン研究所)等の講師をしていることもあり、これからはもっと不特定多数の方々が立体イラストレーションを楽しめるようなキットの開発を考えています。

 

Q2

仕事や自主制作の時に使用する画材や紙、デバイス、ソフトウェアはどういったものですか?

立体造形に使う粘土は主にSTAEDTLERの「FIMO」です。オーブンを使い、110°Cで15 〜20分ほど焼いて固めます。造形の形態によって、パジコの軽量粘土 「ハーティ」や、お湯で柔らかくして造形する半透明のヒノデワシ「おゆまる」等を組み合わせることも。キャラクターデザインの仕事が多いので、そのキャラクターごとに合った素材を考えます。立体を作る前に描くラフはiPad ProのCLIPSTUDIO PAINTを使っています。

 

Q3

COVID-19の影響による生活や仕事の変化はどのようなものでしたか?

試作に使った粘土がたくさんあるので、リメイクしてアクセサリー等を作れないかあれこれ実験したりし ていました。コロナ禍ではそのように余裕のある時間も多かったのですが、私の場合はむしろ追い詰められたり移動 したりする方がよりよいアイデアが生まれることがわかりましたので、早くどこにでも移動出来る日常を取り戻したいで す。2018年末からは台湾に事務所を移して毎月行き来することで、大きな刺激を得ていました。

 

Q4

絵を描く時の思考や技術の礎、実作業の時の着想源や資料として利用するものはどんなものですか? また、2020年印象に残ったものは?

Q3の回答とダブりますが、私は環境を根こそぎ変えることが、制作の大きな支えになっています。基本的に室内にこもりきりですが、場所は世界中好きなところを選んで移動していました。2020年は12月に三重県伊勢市 主催のクリエイターズ・ワーケーション事業に運よく参加出来、2週間現地に滞在して仕事をすることで、多大な刺激と影響を受けました。海外にばかり行っていましたが、しばらくは国内に目を向けたいと思っています。

 

Q5

仕事上で気を付けていること、知っていてよかったこと、今後身に付けたい技術や知識はありますか?

よく自らの作品を模倣される事件に巻き込まれますが、著作権についてよく知っておけば自分も他人も助けられると実感しています。今後は中国語と英語をもっと勉強したいです。世界が何倍にも広がると思います(若い頃にちゃんとやっておけばよかった……)。翻訳ソフト等もありますが、やはり直接のコミュニケーションに勝るものはないので、頑張ります!

 


本記事は『illustration FILE 2021 下巻』の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

『イラストレーションファイル2021 下巻』(玄光社)


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