公益財団法人メトロ文化財団が制作する2021年度のマナーポスターが発表された。東京メトロの駅構内や車内にポスターを掲出し、マナー向上を呼びかける本取り組みには、これまでにも長場雄さんやJUN OSONさんらのイラストレーションが起用されている。
2021年度のポスターは輪の中に描かれた鮮やかなイラストレーションが見る人の目を引き、「つなごう、マナーの『わ』」というメッセージを伝える。イラストレーションを担当するのは、雑誌、書籍、広告など活躍の場を広げるイラストレーター・millitsukaさん。アートディレクションとデザインを手がけるのは有久デザイン事務所だ。
今回はその制作背景について、millitsukaさんにインタビュー。お仕事で初挑戦した「顔を描くこと」や、制作時の工夫を語ってくれた。
――今回、millitsukaさんのイラストレーションが起用されることになったきっかけを教えて下さい。
私の作品があまりまだたくさんの人の目に触れていないということと、ポスターとして目を引くために鮮やかなグラデーションの要素が適しているので、その点が採用して頂いたポイントになったのではと思っています。
――2021年度のスローガン「つなごう、マナーの『わ』」には、お互いを思いやる「和」の気持ちや、マナーの「輪」を広げるなど、さまざまな意味が込められていると伺いました。millitsukaさんはこのテーマをどのように捉え、描いていますか?
普段の作品には目や口がなく今回初めてお仕事で顔を描くことに挑戦させて頂いたのですが、会話がなくともお互いを思いやるやさしい眼差しをマスクで隠れていない目と眉で描けたらいいなと思っています。
――millitsukaさんの作品は夢の中にいるような幻想的な雰囲気が印象的だと感じます。一方で今回描くのは交通マナーという現実的なシーンですが、表現する上で意識していることや制作の違いはありますか?
一番は「親しみやすさのある人々の等身」を意識しています。
そして画面内に複数の人がいることがいつもと違い新鮮で、それぞれのポーズの模索や、全員が見えやすい画角などを探す作業がパズルをしているようでとても楽しいです。
――駅の利用者にマナー向上を呼びかけるツールとして、工夫している点や苦労している点はありますか?
着ている服や持っている鞄など、プレーンな雰囲気にするのがなかなか難しいです。より多くの人に親しみを持ってもらわなければならないので、自分の個人的な好みが大きなノイズにならないように気をつけています。
――1年間制作を担当する上での意気込みや注目ポイントをお聞かせ下さい。
見た人が少しでも明るい気分になれるような、愛嬌のあるイラストレーションを描きたいです。
カラフルさを残しつつも月ごとの統一感のあるすてきなデザインにして頂いているので、ぜひ駅構内を歩いた際にちょっとだけキョロキョロと探して頂けるとうれしいです。
〈プロフィール〉millitsuka(ミリツカ)/1991年生まれ。武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒。東京在住。デジタル、アナログの両方で鮮やかなグラデーションが特徴のイラストレーションを描く。雑誌、書籍、広告のイラストレーションを手がけるほか、個展などで精力的に作品を発表。第206回ザ・チョイス入選。HBファイルコンペvol.31 仲條正義賞。
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