駆け出しクリエイターのための著作権Q&A(第1回・写真をもとにトレースしたイラストを商用利用してもいい?)

あなたの作品は大丈夫…?時間をかけて作ったものを無断盗用されたり、 はたまた知らずに著作権を侵害していたり…。トラブルに巻き込まれないためにも、最低限の知識は身につけておきたいものです。

本記事では、書籍駆け出しクリエイターのための著作権Q&A』(川上大雅著)から、クリエイターのよくあるトラブルの事例と回避策をご紹介。権利や契約、お金の話をやわらかく、少しかみ砕いて解説します。第1回のテーマは「写真のトレース」についてのよくある事例です。

(連載のまとめはこちらから)

 

Q.写真をもとにトレースしたイラストを商用利用してもいい?

 イラストなどを書くときに、実際の写真をパソコンなどに取り込みいわゆる「トレース」を行って制作することがあります。

 たとえば、イラストの背景となる画像を制作するのに、写真を「フォトショップ」などの画像編集ソフトに読み込み、それの色を変えることで背景を作ったりします。また、人物の写真を読み込み、「イラストレーター」などの描画ソフトで、線をなぞっていくことで、簡単に人物のイラストが描けてしまったりもします。

 これはとても便利な手法であり、トレースのための素材集も販売されています。

 インターネットなどで発見した、他人が撮影した写真もトレース素材に利用したいと思っているのですが、これはどうなのでしょうか。

 

法の解釈を含む説明

 もともとの写真は著作物に該当する場合が多いでしょう。こちらをパソコンなどに保存する行為は著作権法上「複製」に該当しますし、トレースする行為は写真を編集する行為になりますので、「翻案」(既存の作品の特徴を維持しつつ、部分的に作り変えること)に該当します。

 ここから考えると、他人が撮影した写真をもとにトレースしたイラストを商用利用することは、許諾がないと難しい場合が多いと考えるべきです。

 

注意すべきポイント

 他人が撮った写真を自己の創作物に取り入れることはできる限り控えましょう。

 フリー素材であっても、「改変NG」である場合は案外多いものです。

 ばれないと思って、こうした行為に及ぶことは多いのですが、トレースは現在では判明することもままあります。

 気づいたら訴えられていた……みたいなこともよくあるケースです、著作物にコピーガード的なものが埋め込まれていて、海外から請求が来たという事例もあります。

 トレースでコピーされるのは「ポージング」や「構図」です。特にこのあたりに特徴があるような写真やイラストにおいては、注意が必要ではないでしょうか。

 

A.NG!

許諾を受けたり、自分で撮影したり、使っても大丈夫な写真を使おう

 

▶︎第2回(有名人に似ているキャラクターイラストを作成してもいい?)

 


駆け出しクリエイターのための著作権Q&A』(川上大雅著)
「意外と」と言っていいのか、「全然」と言っていいのか、権利の話は避けて通ってきている人が多いでしょうし、契約やお金の話はさらに苦手で極力避けてきている人が多いのではないでしょうか。

本書は、そんなあなたに、著作権をはじめとする権利を少しやわらかく、契約やお金の話についても毛嫌いしないためのきっかけを与えるものです。巻末には、権利関係でもめないための7つの契約書ひな形を掲載。

<プロフィール>

かわかみたいが/弁護士・弁理士。

1980年、札幌生まれ。2008年に弁護士登録。札幌市内の事務所にて勤務。2010年にギャラリー「salon cojica」を開廊。2014年「札幌北商標法律事務所」開所、同所にギャラリーsalon cojicaを移転し、現在に至る。美術と法律のあいだで、様々な側面からクリエイターを支えている。近年の関わりとして「なえぼのアートスタジオ」「geidaiRAM」などがある。

https://www.satsukita-law.jp/
https://www.salon-cojica.com/

 

 

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