イラストレーターに聞く“5つの質問”  第8回利光春華さん

 

『illustration FILE 2021』巻頭企画「イラストレーターに聞く“5つの質問”」。そこには、イラストレーターのみなさんの実感を伴った言葉が多数掲載されています。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、混乱が日常となっていった2021年。イラストレーターの方々は何を考え、感じ、どのように絵と向き合ってていたのでしょうか?
本記事では、掲載された方々の中から編集部が12名をピックアップし、当時の回答をそのまま紹介します。第8回目に登場するのは、華やかな世界観で、広告、パッケージのほか、舞台、衣装、小道具など幅広く手がける利光春華さんです。

(連載のまとめはこちらから)

 


 

オリジナル作品「Dreamy Bumbi」

1983年生まれ。08年アパレル会社を退職後、独立。近年はイラストレーションに留まらず、舞台、衣装、小道具、独自の世界観を作り込み、制作を行う。

ウェブサイト:https://www.haruka-toshimitsu.com

Q1

イラストレーションという言葉が多様化する昨今、今後のイラストレーターとしての方向性やイラストレーションの可能性をどのように考え、活動していますか?

私の場合、「絵を描いて納品」ではなく「クライアント様に使って頂き一定の成果を得て頂くまで」を業務範囲と考えています。よって紙面やWebで表現されるイメージに留まらず、クライアント様が求める最適な方法を提案すべきと思っています。そのため、ご依頼を頂いた際、まず目的とゴールをお聞きします。その希望に応え続けた結果、 イラストレーション+αの依頼が増えました。具体的には「映像制作の舞台セット・衣装・小道具、全ビジュアルを一括請負制作」、「シリーズのパッケージデザインを店頭棚展開・販促物を含めて提案」等です。また、どのような案件においても、全体の世界観を最初に考えます。たとえ1枚の絵を描く際にも、その世界観をどのようにして断面として取り出せば、エンドユーザー様がその続きを想像出来るか?という余白を常に意識しています。

Q2

仕事や自主制作の時に使用する画材や紙、デバイス、ソフトウェアはどういったものですか?

ラフはシャーペン、本描きは水彩絵具です。タッチによって、アクリル絵具等と使い分けもします。デバイスはiMac。使用ソフトはPhotoshop、Illustratorです。

Q3

COVID-19の影響による生活や仕事の変化はどのようなものでしたか?

私的には、コロナ禍で人と会えなくてもイラストレーションを通したコミュニケーションがしたいと考え、 2020年9月からスマートフォン壁紙を作りSNSと自分のWebサイトで無料配布しています。フォロワーの皆様からリクエストを頂いて描くこともあり、よい気付きの機会となっています。仕事の変化としては、問い合わせが増えました。 単純に動画・静止画共に撮影はクライアント、広告代理店、スタイリスト、カメラマン、照明、モデルなど大がかりで大人数になりがちです。一方、イラストレーションであればリモートで業務依頼から納品まで完結出来るため、依頼するハードルが下がったのだと思います。

Q4

絵を描く時の思考や技術の礎、実作業の時の着想源や資料として利用するものはどんなものですかまた、2020年印象に残ったものは?

小さい頃、繰り返し読んだ絵本の影響が大きいです。構図や色使いなど、ページをめくる時のワクワクする感覚を思い出しながら、描いています。

Q5

仕事上で気を付けていること、知っていてよかったこと、今後身に付けたい技術や知識はありますか?

仕事では次のことを常に意識しています。「クライアント様の求めているイメージと目的」、「エンドユーザー視点で私の想像する作品となっているか?」、「世界観を作り込む際、私にしか出来ない情景や色使いになっているか?」。特に最近は世界観を作り込む依頼が増えており、 案件ごとに世界を創造しています。ネタが尽きないように、 日頃から本・映像・日常を通じ、アイデアを蓄えるようにしています。

 


本記事は『illustration FILE 2021 下巻』の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

『イラストレーションファイル2021 下巻』(玄光社)


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