『illustration FILE 2020』の巻頭企画「イラストレーターに聞く“5つの質問”」。そこには、イラストレーターのみなさんの実感の伴った言葉が多数掲載されています。COVID-19の感染拡大によって、さまざまな変化があった2020年。イラストレーターの方々は何を考え、感じ、どのように絵を描いていたのでしょうか?
本記事では、掲載された方々の中から編集部が12名をピックアップし、当時の回答をそのまま紹介します。第5回目に登場するのは岡野賢介さんです。
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岡野賢介
1979年生まれ。多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。2016年タンバリンギャラリーHuman Museum大賞、17年ペーターズギャラリーコンペサイトウユウスケ賞。主な仕事に『小説推理』表紙を2018年1月から2021年12月まで毎月担当。ほかに書籍装画、挿絵、Web、広告など。
Q1
2020年代のイラストレーションの変容や拡張、 イラストレーターとしての在り方の変化を感じますか? または、現在具体的に自身の活動で力を入れていることは?
さまざまな媒体や用途に対応するために、自分の好きなシンプルで印象的なイラストレーションのスタイルを、より強く、幅広くすることを第一に考えています。そのために画材や表現の方法を固めすぎないようにしていて、常に進化するべくちょっとずつ新しい画材を使用したり、技法を変えたりといろいろ試しています。
Q2
仕事や自主制作の時に使用する画材や紙、デバイス、ソフトウェアはどういったものですか?
案件によって変えたり試したりしています。背景がある場合や情緒を表現したい場合は、ウォーターフォード水彩紙にカラーインクで着彩し、丸ペンで主線を描いたり、少し強めの印象にしたい場合はアクリルガッシュで着彩し、線は三菱鉛筆のポスカなど。シンボリックに人物のシルエットを描きたい場合は、小さいものは丸ペンで、大きいものはポスカで線を描きます。カラーインクは紙によって表情がまったく変わるので、今でもよりよい紙を探しています。
Q3
イラストレーションや絵画、デザイン、写真、映像などの視覚表現で、2019年印象に残ったものは?
最近、装画にイラストレーションではなくデザイナーによるグラフィックやタイポグラフィを使用しているものに勢いを感じています。たとえば『偶然の聖地』や『ポリフォニック・イリュージョン』、最果タヒさんの著書など。イラストレーションの表現に比べて鋭さと抽象度が高く、大人っぽいものが特に気になりました。
Q4
絵を描く時の思考や技術の礎、実作業の時の着想源や資料として利用するものはどんなものですか?
人物を際立たせるために、どの角度からどんなレンズで見るかを考えます。その時に参考にするのは映画やドラマなどの映像作品です。映像を観る時は構図やカメラの視点を意識していて、シーンを考える参考資料にTV画面を写真に撮ったり、PC画面のキャプチャを撮ったりしてストックしています。また、イラストレーターになる前から蓬田やすひろさんの装画が好きで、ネットで探した画像をたくさんプリントしてファイリングしています。今でも構図や色合いなどの参考にすることがあります。
Q5
仕事をするなかで気をつけていること、知っていてよかったこと、今後身につけたい技術や知識は?
人物をメインに、自分らしいポーズや形で描くことにこだわっています。また色や構図、光の当たり方なども時間をかけて考えます。ラフから下書きまでに、時間と手間がかかるので効率化したい。SNSなど情報発信の仕方や、自主的な活動(グッズやそのほかいろいろ)ももっと試したいです。
※本記事は『illustration FILE 2020 上巻』の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承下さい。