イラストレーターに聞く“5つの質問” 第6回 平田利之さん

『illustration FILE 2022』巻頭企画「イラストレーターに聞く“5つの質問”」。そこには、イラストレーターのみなさんの実感を伴った言葉が多数掲載されています。新型コロナウイルスの影響が色濃く残っていた2022年。日常の在り方が刻一刻と変わっていく中で、イラストレーターの方々は何を考え、感じ、どのように絵と向き合っていたのでしょうか?

本記事では、掲載された方々の中から編集部が12名をピックアップし、当時の回答をそのまま紹介します。第6回目に登場するのは、ユーモアのある、ひねりの効いたアイデアを盛りこんだシンプルな色と形のイラストレーションで、雑誌、書籍、広告を中心に活躍する平田利之さんです。

(連載のまとめはこちらから)

 


平田利之

オリジナル作品「時差」

1967年東京生まれ。武蔵野美術大学短期大学部卒業。デザイン会社勤務、フリーデザイナーを経て現在に至る。雑誌、書籍、広告等で活動中。創作絵本『やじるし』『じてんしゃのれるかな』(共に日本絵本賞候補作品)が、あかね書房より発売中。

ウェブサイト:http://toshiyukihirata.com

Instagram @hirata.illustration

 

Q1

「イラストレーション」という言葉の持つ意味合いが多様化する昨今、イラストレーターの仕事をどう捉えていますか? また、イラストレーションに感じる希望や可能性、ご自身が力を入れていることは何ですか?

自身としてはイラストレーションはグラフィックデザインの延長という意識が強く、故に求められるものが時代によって左右されるのは宿命ですが、時代を感じつつも引っ張られすぎず、世界観を確立することが必須と考えます。時代と共鳴するのは運といってもよいですが、消費スピードが増す中でマイペースを保つ強さも必要と感じます。イラストレーションは表現法ではなく「機能すること」と考えるとアートもイラストレーションになるという土俵で、機能と作家性(ユーモアのあるアイデア)をどう融合するか、その合体技そのものが自分のオリジナリティでもあるので右脳、左脳フル回転で描きます。大切な人に送るバースデーカードを作る感覚で仕事ができれば最高です。

 

Q2

仕事や自主制作の時に使用する画材や紙、デバイス、ソフトウェアはどういったものですか?

アイデア出しから下絵までは紙と鉛筆です。やはり生身の体が連動しないとよいアイデアは生まれません。アイデアノートは自分にとって宝物です。数年前にボツにしたものでも時間を置いて改めて見返し、少し手を加えるとよくなったりすることもあるので面白いですね。実制作はllustratorがメインで、フラットでシンプルな描画スタイルから自分には現状ベストなツールです。

 

Q3

新型コロナウイルスによる日常生活や仕事の変化、影響はありましたか?

自宅が仕事場で、もともと出歩く習慣がないため生活にはほとんど変化はありません。キャンセルになった仕事はありましたが、こんな状況では自分がコントロールできることに集中するしかありません。オリジナルを描く時間が確保できるなど、よい方に捉えています。

 

Q4

絵を描くときの思考や技術の礎、実作業の時の着想源や資料として利用するものはどんなものですか? また、2021年印象に残ったものは?

1960年代前後のグラフィックデザインが好きでその関係書籍を中心によく購入し、時々眺めては刺激を得ています。特にデザイナーが作った絵本からの影響は多々あります。展覧会からも刺激を受けますが、ここ1~2年はあまり行けてないので書籍の比重は増えました。2021年特に印象に残ったのは書籍では『FOLONLES AFFICHES』『The Complete Film Posters of HansHillmann』『和田誠 日活名画座ポスター集』、展覧会では京都ddd gallery「小島武展」です。

 

Q5

実際に仕事をする上で気をつけていること、知っていてよかったこと、今後身に付けたい技術や知識は?

仕事では最近ダイバーシティなど、表現に気を使う場面が増えてきています。よいことと捉え、新たなアイデアが生まれる契機になればと考えます。身につけたい技術はアニメーションです。仕事では何度か原画制作で関わったり、私家版でパラパラ漫画を作ったりしていて、楽しい作業でした。やはり動かすことでしか表現できないアイデアもあるので。絵本も引き続き挑戦したいです。

 


※本記事は『illustration FILE 2022』下巻の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

 

『illustration FILE 2022 下巻』(玄光社)


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