イラストレーターに聞く“5つの質問” 第8回 布川愛子さん

『illustration FILE 2020』の巻頭企画「イラストレーターに聞く“5つの質問”」。そこには、イラストレーターのみなさんの実感の伴った言葉が多数掲載されています。COVID-19の感染拡大によって、さまざまな変化があった2020年。イラストレーターの方々は何を考え、感じ、どのように絵を描いていたのでしょうか?

本記事では、掲載された方々の中から編集部が12名をピックアップし、当時の回答をそのまま紹介します。第8回目に登場するのは布川愛子さん。画材や制作の進め方、SNSの活用まで、具体的に教えて下さいました。

(連載のまとめはこちらから)

 


布川愛子

1980年生まれ。東京藝術大学美術学部デザイン科卒業。書籍装画、絵本、広告等で活動。著書に絵を担当した絵本『あきのセーターをつくりに』『はるのワンピースをつくりに』(ブロンズ新社)、『かわいいものいっぱいの塗り絵ブック』(グラフィック社)等。

Web:http://nice-nice-nice.com

 

Q1

2020年代のイラストレーションの変容や拡張、 イラストレーターとしての在り方の変化を感じますか? または、現在具体的に自身の活動で力を入れていることは?

私は絵をInstagramにアップするし、よく見ているのですが、所謂InstagramやTwitter映えするイラストレーションに注目が集まるような気がします。 絵を1枚で見るのではなく画面上に正方形が整列している時のトーンや、お洋服や自然の写真など絵と関係ない画像に混ざっている時に “思わずタップしたくなるか?” ということです。これからもトレンドが変わり続けるなか、私はどうしたいかな、どういう絵を届けたいかなとよく考えています。

 

Q2

仕事や自主制作の時に使用する画材や紙、デバイス、ソフトウェアはどういったものですか?

鉛筆(uni)、水彩絵具、水彩紙、iMac、iPad(練習中!)、Photoshop、Procreate。ラフは鉛筆かPhotoshopで描きます。本書は水彩で描いたものをスキャンしてPhotoshopで調整することが多いです。iPadで小さなカットやラフなど制作することも。これまでPhotoshopは補佐的に使うことが多かったのですが、仕上げの作業でもっとしっかり使ってみたい気分です。

 

Q3

イラストレーションや絵画、デザイン、写真、映像などの視覚表現で、2019年印象に残ったものは?

映画「ミッドサマー」のポスターです。怖いものが極度に苦手なので映画はどうしても観られなかったのですが、トレーラーなどを見て恐ろしくて美しく眩しくてサイケデリックで……頭が混乱しながらも怖いもの観たさが炸裂しました。大島依提亜さんがツイートされていた映画の舞台となるホルガ村の(架空の)Webサイトも、気になって何回か訪問しています。また、去年個展でご一緒させて頂いた「額縁 百合山」の額が本当に素晴らしく、心が震えました。これからまた共同で作品を作る計画が楽しみで仕方がないです。

 

Q4

絵を描く時の思考や技術の礎、実作業の時の着想源や資料として利用するものはどんなものですか?

仕事なのか、またそれが自由度が高い仕事 or ほぼ描く内容が決められている仕事なのかなど、場合によりますが、どんなムードの絵にしたいかを最初に考えて制作を始めます。技術は美大受験の時以外は特に練習はしていないです。自分が描きたい絵を目指しながら日々制作する中で、技術も備わっていたらよいな、と思います。着想源は、生活のなかで目にした好きな世界を頭の引き出しに貯めています。資料は画集、図鑑、昔の絵本、Web検索などです。本屋に行くとやっぱりよいなと感じます!

 

Q5

仕事をするなかで気をつけていること、知っていてよかったこと、今後身につけたい技術や知識は?

始めにスケジュール、ギャラ、使用範囲、使用期間などは確認すること。また、クライアントの希望するタッチと自分のタッチが異なっていることがあるのでそのことも。今後、アニメーションのお仕事をするのが目標なので(Eテレ「みんなのうた」とか……!)、動く絵の練習をしたいです。

 


※本記事は『illustration FILE 2020 下巻』の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承下さい。

『illustration FILE 2020 下巻』(玄光社)


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