『illustration FILE 2021』巻頭企画「イラストレーターに聞く“5つの質問”」。そこには、イラストレーターのみなさんの実感を伴った言葉が多数掲載されています。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、混乱が日常となっていった2021年。イラストレーターの方々は何を考え、感じ、どのように絵と向き合っていたのでしょうか?
本記事では、掲載された方々の中から編集部が12名をピックアップし、当時の回答をそのまま紹介します。第1回目に登場するのは、電車広告や書籍装画を数多く手がけるあまえびさんです。
(連載のまとめはこちらから)
あまえび
広島県生まれ。実践装画塾修了。人物モチーフを中心に、ちょっと不思議でかわいい絵を描いていきたいです。
ウェブサイト:https://www.sitesue.net
Q1
“イラストレーション”という言葉が多様化する昨今、今後のイラストレーターとしての方向性やイラストレーションの可能性をどのように考え、活動していますか?
画材もタッチもアピールする方法も、本当に多様になりました。動画や漫画も含め「絵を描くスキル」の需要は幅広い分野で高まっていて、挑戦出来ることは多いと感じます。その分目移りもしやすいので、今は「どんな活動をしたら楽しいのか」をもう一度見つめ直したい気持ちです。自分の本心を置いてきぼりにしないようにしたいと思っています。
Q2
仕事や自主制作の時に使用する画材や紙、デバイス、ソフトウェアはどういったものですか?
MacBook ProにWacom Cintiq Pro 24を繋いでいます。描く時は広い画面が好きなので、iPadはプレゼンやZoom等の会議に使うことが多いです。ソフトは主にCLIP STUDIO PAINTとPhotoshop CC。ラフから本番までだいたいこの2つで描きますが、最初のアイデア出しのみ紙と鉛筆で描くこともあります。
Q3
COVID-19の影響による生活や仕事の変化はどのようなものでしたか?
もともと籠って描く仕事なので生活の変化は思ったよりないです。慌ただしく人と会うことから距離を置けてよかったと感じることもありました。ただ大量に流れてくる情報には参りがちなので、TVやSNSから離れ、本や映像作品に触れる時間が増えた気がします。それらの影響が絵に出てくれるといいなと思っています。
Q4
絵を描く時の思考や技術の礎、実作業の時の着想源や資料として利用するものはどんなものですか? また、2020年印象に残ったものは?
時代の流れを見ること、幼い頃から本質的に好きなものに向き合うことの両方を常に意識しています。 日頃はWebでも書籍でも外出時でも、気になる物事をメモするようにしています。あまり吟味せず、なんでも気楽に記録しておきます。そのうち時間をかけてそれらが脳の中で熟成され、アイデアの素になることが多いです。記録したものを慌てて使おうとするとちぐはぐな絵になりがちなので、そこは焦らないようにしています。最近印象に残ったものは「ウォッチメン」( HBOのドラマ)、『タラブックス』(野瀬奈津子・矢萩多聞・松岡宏大 著/玄光社 )、『あれよ星屑』(山田参助 著/KADOKAWA エンターブレイン)、「赤鬼」(野田秀樹 作・演出/東京芸術劇場の配信)。あとバーバパパ。ずっと好きですが、特に昨年は絵本の出版から50年の記念イヤーでプチフィーバーでした。
Q5
仕事上で気を付けていること、知っていてよかったこと、今後身に付けたい技術や知識はありますか?
以前から動きはありましたが、特にここ数年急激に、人権意識についてより敏感にならざるを得ない時代が来ています。これまでとは違う切り口のビジュアルを提案出来ることに喜びを感じてもいますので、クライアントと相談の上、現状で最善の表現を模索していきたいです。他にはキャラクターのお仕事を頂くようになったので、知財関係の知識を深めたい。絵の技術的なことでは人体デッサンの練習をもっとしたいです。
※本記事は『illustration FILE 2021 上巻』の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。
『illustration FILE 2021 上巻』(玄光社)