読書だより:第10号『MIZUMARU’s』

週の始まりに、絵本や漫画、創作に関する書籍などを中心に、楽しく読める1冊をご紹介する本連載。お昼休憩や帰宅後の時間のお供に、はたまたお子さまへの読み聞かせに……。気になる本に出会ったら、ぜひ手に取ってみてください。

夏の盛りになり、お家でゆっくり過ごす機会の増える方も多いのではないでしょうか。そんな昼と夜の境が曖昧になる8月は、じっくりと時間をかけて読みたい作品ラインナップを掲載していきます。今週ご紹介するのは『MIZUMARU’s』(淡交社)です。

 


『MIZUMARU’s』

安西水丸事務所 監修(淡交社)

2,700円+税 BD:宮添浩司 撮影:安彦幸枝

幼い頃から目にしていたという青い皿、さまざまな様式の灯台のオブジェ、仲間たちと競うように集めたスノードームなど……。イラストレーター・安西水丸さんが国内外で集めた蒐集品の中から、作品に描かれたものを中心に厳選された約140点のコレクションを、実物の写真と入手した背景やコメント等と共に紹介していく1冊。

集められた「もの」とその記憶をとおして、新しい安西水丸像に迫ります。

みなさんはコレクションしているもの、いつの間にか集まってしまうものがあるでしょうか。ファッションやインテリアと同じように、愛着を持って買い集められた蒐集品はその人の輪郭を描き出すもの。同書では、作品にも登場するお馴染みのものや、ブルーウィローのコレクション、アメリカのフォークアートや郷土玩具など、イラストレーター・安西水丸さんのコレクションがエピソードと共に紹介されます。

冒頭では蒐集品とそれが描かれたイラストレーションが1対で掲載され、作品世界が一気に地続きになったような不思議な感覚が味わえる構成に。水丸さんのインスピレーションの源に触れることが出来る貴重な機会と言えるでしょう。

“これといった使い道(しいて使えばペーパーウエイトくらいか)はない”としつつも、時にはっきりと、時に曖昧に語られるコレクションの魅力に、水丸さんがそれぞれのどんな所に美しさ、よさを感じていたのか、ページをめくりながらその眼差しについ思いを馳せてしまいます。水丸さんの作品に静寂や永遠を感じるのは、そこに描かれた「もの」が経てきた長い年月に、作品をとおして触れているからなのかもしれません。

▶︎『MIZUMARU’s』


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