『季節と歌い、花と踊る – 日菜乃画集』発売記念! 日菜乃さんインタビュー

柔らかな線と心躍る色の組み合わせでレトロポップなイラストレーションを描く日菜乃さん。中国で出版された初の作品集の邦訳版である『季節と歌い、花と踊る – 日菜乃画集』(玄光社)が、7月17日(水)に発売される。

今回はその発売を記念して、メールインタビューを実施。華やかでストーリーを感じさせる日菜乃さんのイラストレーションはどのように形作られているのか? 制作についてを中心にお聞きした。

 

『季節と歌い、花と踊る – 日菜乃画集』

日菜乃 著(玄光社)

2,700円+税 日本語版AD+D:惣田紗希

 


——これまでどのように絵の勉強をされてきましたか? また、イラストレーターというお仕事をいつ頃から意識されていたのでしょうか。

美術大学に入学する際の受験でデッサンの基礎を学びました。昔からイラストレーションを見ることが好きだったので(現代のものに限らず、版画や昔の作家さんの画集、明治時代の挿絵など)、大学生の頃はもっとたくさんの素敵な作家さんと出会うために、自分がどのような点に魅力を感じているのかを分析するようになりました。

その際、配色や線の扱いに特に魅力を感じたのですが、自分の得意な線を描く作業と偶然か必然か合致したので、自分でも描いてみようと思ったのがイラストレーターという仕事を意識したきっかけです。

ちょうどそのタイミングでコロナ禍となり、大学が休校になってしまったので、時間を活かして毎日起きている時間はずっとイラストレーションを描くことに没頭していました。

 

——どの作品も、鮮やかながらまとまりのある色使いが目を引きます。配色はどの段階で決めているのでしょうか? また、統一感を出すために注意していることはありますか?

配色は最初に何のモチーフを描こうか決める時に一緒に決めるので、イラストレーションの核になっていると思います。中には、「この色の組み合わせを使いたいからこのモチーフを描こう」という決め方をしたイラストレーションもあります。ですので、配色を褒められたときは核を褒められたようでうれしいです。

配色を中心に構成しているので、自然と統一感が出るのもあると思いますが、カラフルな配色の中でもメインの色を決めて、画面全体で「メインカラーは何割くらい」「サブのカラーは何割くらい」と割合を調節しているので、より統一感を感じられるのではと思います。

 

——画面から溢れるような構図も印象的で、いつまでも眺めていられる魅力があります。構図を決める際に意識していることや、参考にしているものがあれば教えてください。

構図も配色と同じように最初から決めることがほとんどで、なるべく画面が大きく見えるように構成しています。イラストレーションを始めた1番最初から自然に作っていた構成で、最初は無意識だったのですが、構成に言及されることが多くなってから意識するようになりました。

小さな頃から漫画を読むのが好きだったので、コマ割りのような構成は漫画を無意識に参考にしたのではないかと、いま考えると思います。

また、大学時代に飛び出す絵本を作っていたので、枠から大きくはみ出す構成は立体作品と平面作品という違いはあれど、参考にしたように思います。

 

——複数のモチーフが登場する作品が多くありますが、モチーフはどのように選んでいますか? また、資料集めやアイデアのストックはどのように行っているのでしょうか。

先ほど述べたように、配色からモチーフを選ぶことは多々あります。また、集めてきた画集や書籍の資料から選ぶこともありますが、町や近所、蚤の市を歩いていてかわいいなと思ったものを中心に描くこともとても多いです。

お花が好きなので、散歩中季節によって移りゆくお花たちを見かけて、それらをメインに描いているうちに、今回の作品集やお花関連のお仕事につながっていったので、自分の足で歩いて素敵なモチーフを見付けることは大事だなと最近改めて感じました。

描きたいものを見つけたら、すぐさま写真に残したり、メモしたりして、記録しているので、スマホがストックでパンパンになっています。

 

——今回の作品集では思い出や記憶を切り取ったものを多く描かれているとのことですが、特に印象に残っている作品はありますか?

特に印象に残っている作品は選び難いですが、「鈴蘭(すずらん)」と「白詰草(シロツメクサ)」、「躑躅(つつじ)」の3つです。

「鈴蘭」は刺繍でブローチを作っているシーンを描いているのですが、自分で実際に作った経験を基にイラストレーションに描き起こしました。ブローチ作りは難しすぎて、一回で断念した思い出も蘇ります。

「白詰草」は昔よく指輪や冠を作ったり、四葉を探したりした体験から制作しました。真ん中の枠に葉数が多いクローバーが書かれているのですが、四葉探し中にシャボン玉の液で三つ葉がくっついて六葉になったクローバーを見つけた時の記憶です。

「躑躅」は小学校の帰り道によく蜜を吸っていた記憶から制作しました。自分の中で、なんとなく赤い躑躅の方が甘い説があったので、イラストレーションの中の子も赤いものを吸っています。

 

——今後挑戦してみたいお仕事や、作ってみたいグッズがあれば教えてください。

お菓子やコスメなどの可愛らしいモチーフを描くのが好きなので、ビジュアル制作やパッケージデザインなどのお仕事をしてみたいと思っています。

イラストレーションを始めた当初、お花をたくさん描いていたらお花関連のお仕事につながっていったので、最近はお菓子のイラストレーションをたくさん制作しています。何かにつながるきっかけになればうれしいです。
音楽を聴くのも好きなので、音楽関連でもいつかお仕事をしてみたいです。

 

〈プロフィール〉

ひなの/イラストレーター。心踊る色の組み合わせと柔らかな線で、レトロポップなイラストレーションを描いている。2023年『わたしの特別な日曜日 〜日菜乃塗り絵ブック〜』(グラフィック社)刊行。エージェントルモンド所属。

 


【日菜乃「季節と歌い、花と踊る – 日菜乃作品集」発売記念展】

画集の発売に先駆け、東京・原宿のギャラリールモンドで7月2日(火)より個展を開催。会場では画集の先行販売を実施し、購入者には会場購入特典として限定のポストカードが配布される。

会期:2024年7月2日(火)~7月7日(日)

会場:ギャラリールモンド

住所:渋谷区神宮前6-32-5 ドルミ原宿201

時間:12:00〜20:00 (最終日は17:00まで)

会場購入特典ポストカード(イメージ)

 


『季節と歌い、花と踊る 日菜乃画集』(玄光社)

日菜乃さんが四季や二十四節気などの暦をベースに描く、自身の大切な記憶、そして現代を生きる私たちにとっても身近な花々や草木、季節の移ろいを繊細に描き出したイラストレーション作品をまとめた1冊。巻末には、一部作品の制作過程も収録しています。

*本書は中国の北京磨鉄文化集団股份有限会社より刊行の作品集『彼时与四季馥郁相会』邦訳版です。


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