『illustration FILE 2022』巻頭企画「イラストレーターに聞く“5つの質問”」。そこには、イラストレーターのみなさんの実感を伴った言葉が多数掲載されています。新型コロナウイルスの影響が色濃く残っていた2022年。日常の在り方が刻一刻と変わっていく中で、イラストレーターの方々は何を考え、感じ、どのように絵と向き合っていたのでしょうか?
本記事では、掲載された方々の中から編集部が12名をピックアップし、当時の回答をそのまま紹介します。第2回目に登場するのは、アクリル絵具、鉛筆、墨などを用いて、書籍、絵本、新聞連載挿絵、パッケージなどのイラストレーションを手がける西山竜平さんです。
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西山竜平
1988年生まれ。福岡県出身。愛知県立芸術大学デザイン科卒業。同大学院前期博士課程修了。2020年東京装画賞銀賞。主に書籍、雑誌、絵本、パッケージ等の分野で活動。主な使用画材:アクリル絵具、墨、色鉛筆。
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Q1
「イラストレーション」という言葉の持つ意味合いが多様化する昨今、イラストレーターの仕事をどう捉えていますか? また、イラストレーションに感じる希望や可能性、ご自身が力を入れていることは何ですか?
「イラストレーション」という言葉よりも、「イラスト」という言葉が広く使われるようになったなと感じます。また、それぞれ微妙に思い浮かべるイメージも違うように思います。それぐらい人によってイメージが違うのと同様に、媒体によっても求められているイラストレーションの価値基準が違うためイラストレーターとして仕事をすることは、その違いを把握しつつ自身のテイストをどう活かすのかを考えることだと思います。また近年感じる可能性や希望は、個人の表現を発信できる媒体が普及し発信することが当たり前になったことで、何かを作ることが以前より身近になったように感じます。そんな中で、絵を選ぶ・使う・作ることも身近になってほしいです。
Q2
仕事や自主制作の時に使用する画材や紙、デバイス、ソフトウェアはどういったものですか?
ラフは鉛筆で紙に描きます。ラフの段階で色味が必要な場合はProcreateでざっくりと色をのせることが多いです。本番は水張りした紙にアクリル絵具や墨で描きます。繰り返し画面に水を含ませたり、何層も色を塗り重ねるので強度のあるアルシュ水彩紙をよく使います。
Q3
新型コロナウイルスによる日常生活や仕事の変化、影響はありましたか?
緊急事態宣言でストップした案件がいくつかありました。その間報酬は発生しないため、そういう仕事しかなかった場合を思うとゾッとしました。特にフリーのイラストレーターは今回のような外的要因に生活を左右されやすいなと改めて実感しています。現状の仕事の仕方だけに依存するのは危険だと意識するようになりました。
Q4
絵を描くときの思考や技術の礎、実作業の時の着想源や資料として利用するものはどんなものですか? また、2021年印象に残ったものは?
今まで描いてきた自分の絵です。描いた絵を基に思考と実験を繰り返し、作品を発展させたり派生させたりして制作を続けています。その中で得られたノウハウを仕事に活用し、仕事で描いた絵から自身の創作に還元してまた作品を作ります。だから、自主制作と仕事の絵を行き来することと、今まで繰り返し制作してきた絵が礎になっていると思います。今は外部からの情報はほどほどにして、内面を掘り下げて着想を得ることを大切にしています。なので、たくさん何かを見ているわけではないのですが、印象に残っているのは、『アライバル』(ショーン・タン著)、タラブックスの絵本、METHANE STUDIOSの作品集、映画「グランド・ブダペスト・ホテル」です。
Q5
実際に仕事をする上で気をつけていること、知っていてよかったこと、今後身に付けたい技術や知識は?
初めてのご依頼の場合は、どういう企業なのか評判などもあわせて検索するように、報酬もなるべく早い段階で確認するよう心がけています。今後身につけたいことは絵本の創作に必要な知識と技術。また、将来的に絵本の装丁も自分で行いたいので印刷方法や綴じ方、紙、書体の知識を増やすことです。
※本記事は『illustration FILE 2022』下巻の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。