『illustration FILE 2022』巻頭企画「イラストレーターに聞く“5つの質問”」。そこには、イラストレーターのみなさんの実感を伴った言葉が多数掲載されています。新型コロナウイルスの影響が色濃く残っていた2022年。日常の在り方が刻一刻と変わっていく中で、イラストレーターの方々は何を考え、感じ、どのように絵と向き合っていたのでしょうか?
本記事では、掲載された方々の中から編集部が12名をピックアップし、当時の回答をそのまま紹介します。第3回目に登場するのは、食べ物を中心に描き、書籍・広告・食品パッケージなどさまざまな媒体へ作品を提供する植田まほ子さんです。
(連載のまとめはこちらから)
植田まほ子
銀行員、Webデザイナーを経てイラストレーターへ。食べ物をモチーフとした作品を多く制作しています。主なお仕事は絵本、装画、広告、食品パッケージ、展覧会オリジナルグッズ等。どうぞよろしくお願いします。
Instagram @mahoko_u
X(旧Twitter) @mahoko_ueda
Q1
「イラストレーション」という言葉の持つ意味合いが多様化する昨今、イラストレーターの仕事をどう捉えていますか? また、イラストレーションに感じる希望や可能性、ご自身が力を入れていることは何ですか?
誰もが個人でイラストレーションを簡単に発信出来る時代になり、しかも皆さまものすごく素敵! 私自身、SNSでたまたま見かけてファンになったイラストレーターさんがプロアマ問わずたくさんいます。その中で自分自身はどう差別化を図っていけばよいのか、一生イラストレーターでいるためには何をすればよいのか……毎日の課題です。
イラストレーションにも多様性が求められる時代なので、普段から絵に直結しない物事にも幅広く積極的に興味を持ち体験するようにしています。今後もSNSでの発信は続けつつ、数年先を見て常に前進していたいと考えています。そして何より、楽しく描くことを常に意識しています。
Q2
仕事や自主制作の時に使用する画材や紙、デバイス、ソフトウェアはどういったものですか?
ラフはiPadでFrescoを使用しています。本番はアクリルガッシュで制作し、それをPCに取りこんでPhotoshopIllustratorで調整してデータ納品しています。最近はデジタル画の依頼も増えてきており、その場合はトータルでiPadのFrescoまたはProcreateを使用しています。
Q3
新型コロナウイルスによる日常生活や仕事の変化、影響はありましたか?
約40点のイラストレーションを描き下ろし、参加した企画展が開催を目前にしてコロナの影響で中止になってしまいました。私の夢の1つの仕事だったのでとても残念でしたし、関係者の皆様の落胆も計り知れないものでした。当時は突然出現したウイルスに世の中も混乱しており、気持ちの整理に時間がかかりました。
また、私はフードイラストレーションを主に描いているので、飲食店へ行けなくなった時はとても困りました。お世話になっている飲食店の力になりたいと思い、微力ながら支援をしていますが閉店してしまったお店もあり、胸が痛む日々が続いています。
Q4
絵を描くときの思考や技術の礎、実作業の時の着想源や資料として利用するものはどんなものですか? また、2021年印象に残ったものは?
絵を描いている時によく思い出すのは、過去に私の絵を友人にプレゼントした際に泣いて喜んでくれた時に味わった、何にも代え難い感情です。その出来事は今でも私の原動力になっています。資料は普段から撮り溜めた写真を利用しています。飲食店に行った際はお店の許可を取った上で撮影しています。
Q5
実際に仕事をする上で気をつけていること、知っていてよかったこと、今後身に付けたい技術や知識は?
今後は3DCGにもチャレンジしたいのでBlenderを勉強中です。加えて、これまで苦手意識のあった文章作成ですが、先日エピソードと共に絵を展示する企画に参加した際に、絵と文章をリンクさせる楽しさに気付けたので、また機会があれば挑戦したいと思っています。
※本記事は『illustration FILE 2022』上巻の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。