1960年代から現在に至るまで、さまざまな絵描きや写真家と共に数多くの絵本を作り上げてきた詩人・谷川俊太郎さん。そんな谷川さんの手がけた絵本の世界を、原画・映像・インスタレーションなど多様なアプローチで展示する展覧会「谷川俊太郎 絵本★百貨展」が、東京・立川のPLAY! MUSEUMで開幕した。会期は7月9日(日)まで。
入り口で出迎えるのは、谷川さんの大好きな車。この「くるま」は、展覧会に合わせて作られた写真絵本『すきのあいうえお』に登場する、谷川さんの「すきなもの」の1つ。展示されているのは、谷川さんが最初に買ったモデルの車だという。
会場内に入ると、誰もが懐かしさを感じる“輪っかの連なり”が目に飛びこんでくる。『ことばあそびうた』(福音館書店)に合わせ、民族楽器を鳴らしながら「けん・けん・ぱ」で遊ぶインスタレーションは、谷川さんの紡ぐ言葉のリズムを体で感じ、共有出来る作りになっている。
道を進んでいくと、次に出会うのは『まるのおうさま』(福音館書店)を基にしたアニメーション。軽快な音楽に合わせて、さまざまな「まる」たちが次々に現れる。一度見たら忘れられないビビッドな色彩と不思議な音楽に、思わず立ち止まって見入ってしまう。
絵本原画のディスプレイも実にバリエーション豊かで、その場にいるだけで心躍るよう。『オサム』(童話屋)の原画は、つつましく暮らすゴリラの「オサム」を思わせる黒く大きな枠の中にこぢんまりと収まっている。『ここはおうち』(ブルーシープ)の原画は作中に登場する家の屋根の下に、『おならうた』(絵本館)はなんとおならドームの中に……。
白いカーテンの奥にあるのは、「もこもこ」のクッションに腰掛けながら『もこ もこもこ』(文研出版)の世界に没入出来る贅沢な空間。スローな朗読に合わせて進む捉えどころのない不思議なストーリーは、何周でも見ていたくなる居心地の良さを与えてくれる。
『なおみ』(福音館書店)の写真が並ぶ通路の先では、大きく開けた会場の壁を『えをかく』(新進/復刊:講談社)の絵が囲っている。谷川さんによる朗読に合わせて絵を眺めていくと、その清々しい色使いが風や光まで感じさせてくれるよう。
銀色の壁に囲まれた一角は、全体的に鮮やかな色味が印象的な会場において、ひときわ静かで無機質な印象を受ける。そこには、「生」と「死」をテーマにした『かないくん』(岩崎書店)と『ぼく』(ほぼ日)の原画が。うっすらと輝く銀色の壁に囲まれて『ぼく』の原画を見詰めると、自分の心の内側もしんと静かになっていくのを感じる。
同じ空間の中には『すきのあいうえお』の映像も。入り口に展示されていた「くるま」のほかにも、次々と現れる谷川さんの「すきなもの」を覗き見ることが出来る。また、和田誠さんとの共作絵本と共に、『あな』(福音館書店)をイメージした立体的なベンチも展示されている。
グッズコーナーでは限定復刊した絵本をはじめとする谷川さんの著作や、谷川さんの“言葉を持ち帰る”ことのできるグッズ、絵本の絵をモチーフにした賑やかな商品がずらりと並ぶ。
そして、PLAY! MUSEUM恒例の入場者へのおみやげは、グッズとしても販売されているトイレットペーパー。包み紙のワタナベケンイチさん描き下ろしのイラストは、会場で販売されているショッピングバッグにも採用されている。谷川さんの言葉がプリントされているこのトイレットペーパーは、これまでなかなか実現出来なかった、本人念願のグッズだという。
展示方法もグッズもさまざまで、まさに“百貨店”のような同展のテーマは「意味があるより、おもしろく」。谷川さんの言葉と絵や写真が生み出す世界を体験しに、ぜひ足を運んで欲しい。
「谷川俊太郎 絵本★百貨展」
会場:PLAY! MUSEUM
〒190-0014 東京都立川市緑町3−1 GREENSPRINGS W3棟 2F
TEL:042-518-9625
会期:2023年4月12日(水)~2023年7月9日(日)※会期中無休
会館時間:10:00〜18:00 (入場は17:30まで)
入場料:一般1,800円、大学生1,200円、高校生1,000円、中・小学生600円
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