イラストレーターに聞く“5つの質問”  第10回田中ひろみさん

『illustration FILE 2021』巻頭企画「イラストレーターに聞く“5つの質問”」。そこには、イラストレーターのみなさんの実感を伴った言葉が多数掲載されています。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、混乱が日常となっていった2021年。イラストレーターの方々は何を考え、感じ、どのように絵と向き合っていたのでしょうか?
本記事では、掲載された方々の中から編集部が12名をピックアップし、当時の回答をそのまま紹介します。第10回目に登場するのは、仏像やかわいい動物などのイラストレーションを得意とし、数多くの書籍を出版するほか、さまざまなメディアで活躍する田中ひろみさんです。

(連載のまとめはこちらから)

 


田中ひろみ

オリジナル作品「薬師如来」

セツ・モードセミナー卒業。奈良市観光大使。仏像、かわいい動物などのイラストレーション、漫画と文章が得意。著書は『心やすらぐ仏像なぞり描き』(池田書店)、『仏像ハンドブック』(ウェッジ)など、約70冊。SPA会員。

ウェブサイト:https://usagitv.com

 

Q1

イラストレーションという言葉が多様化する昨今、今後のイラストレーターとしての方向性やイラストレーションの可能性をどのように考え、活動していますか?

出版社から雑誌の刊行自体が減り、イラストレーションの仕事も減ってきてます。私は仏像の本を出版して以来、いろんな宗派さんが出している雑誌や新聞に関する仕事が増えました。自分が得意とする分野があると、それに特化した仕事が頂けるんだなぁと思います。以前も、「ナースをしてました」と言ったらナース系の雑誌のお仕事を、「ウクレレを習ってる」と言ったらウクレレイベントのポスターの仕事を頂いたこともあります。イラストレーションの個性はもちろんですが、自分自身の趣味や個性等でも、仕事のご依頼があるんだなぁと思います。

 

Q2

仕事や自主制作の時に使用する画材や紙、デバイス、ソフトウェアはどういったものですか?

iMacRetina4K/21.5インチ(2017)。WacomCintiqPro 24 ペンモデル/4K 液晶ペンタブレット(24型) DTK-2420/K0。Photoshop。

 

Q3

COVID-19の影響による生活や仕事の変化はどのようなものでしたか?

今まで、外に取材に行くことが多かったですが、コロナ禍でままならず、家にいることが増えました。家で出来る宣伝活動、SNSやYouTubeで発信したり、LINEスタンプやSUZURIでグッズを作って販売したりしてます。コロナ禍でなければ、ネット配信を自分でこんなに出来るとも思ってなかったので、違う世界が広がりました。

Q4

絵を描く時の思考や技術の礎、実作業の時の着想源や資料として利用するものはどんなものですかまた、2020年印象に残ったものは?

実際に取材に行って写真に撮ったものを資料にすることが多いです。いろいろなところに行くことによって、風景や人との出会いによって刺激を受けています。 2020年に見たものの中では、東京都現代美術館の「石岡瑛子展」の衣装が衝撃的に素晴らしかったです。あと、開催されずに終わった東京国立博物館の特別展「法隆寺金 堂壁画と百済観音」。内覧会に行って、なめまわすように近くで百済観音を360度ぐるりと拝観出来たことが感動的でした。

 

Q5

仕事上で気を付けていること、知っていてよかったこと、今後身に付けたい技術や知識はありますか?

メールは忘れるので、見たらなるべくすぐに返すようにしています(それでもたまに忘れちゃいますが)。また、自分がやりたいことは、口に出していろんな人に言うようにしています。仏像の本も「仏像の本を出したい」と言ってたら出せました。あと、いろんな機会に人脈を増やすようにしています。最近は大津絵のような素朴な感じの水墨画を描きたいなと、思っています。俳句もやっているので、 俳画も描きたいです。

 


本記事は『illustration FILE 2021 下巻』の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。

『イラストレーションファイル2021 下巻』(玄光社)


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