「ザ・チョイス」についてお聞きする入選者インタビュー 【第2回】出口えりさん

40年以上にわたり、イラストレーターの登竜門として『イラストレーション』で開催されているコンペティション「ザ・チョイス」。毎号異なる1人の審査員が、応募作品の中から優秀作品をチョイスすることが特徴です。年4回の全入選作品は年度賞のノミネート作品となり、年度賞の審査は4人の審査員が一堂に会して、投票制で行われます。これまでに数多くのイラストレーターがザ・チョイスから巣立っています。

本記事では、ザ・チョイスに入選された方々に、応募してみて感じたことや、入選後について、インタビューを行いました。2回目に登場するのは、第37回年度賞審査(2019年度)で大賞に輝いた、出口えりさんです。

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出口えり

「昼の戸棚は案外暗い」(第212回 入選作品)

プロフィール:1991年奈良県生まれ。2015年大阪大学文学部人文学科卒業。​2017年桑沢デザイン研究所卒業。​​洋画家・生島浩氏に師事。MJイラストレーションズ22期修了。鈴木成一装画塾修了。

Web:https://www.deguchieri.com

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X(Twitter)@kaijunohito

 

Q1

ザ・チョイスに応募したきっかけを教えてください。

きっかけと呼べそうな、ザ・チョイスとの出会いは2度ありました。

度目は高校1年生の頃に読んだ、佐藤多佳子さんの小説『黄色い目の魚』(新潮文庫)の中でです。このお話はイラストレーターの叔父を持つ高校生の女の子が主人公の物語で、この小説がきっかけで私はイラストレーターを目指すようになるのですが……それはさておき「ザ・チョイス」も『イラストレーション』も小説の中でしっかり名前が登場するんです。なんだろうザ・チョイスって、とそこで気になっていたのですがその時はいつの間にか脳みその奥の方に引っ込んでいきました。

そういうわけでしばらくチョイスの名前は忘れていたのですが、20歳の頃、2度目の出会いがありました。ショーン・タンさんの表紙に惹かれて本屋さんで『イラストレーション』を初めて手に取りまして(2011年9月号no.191でした!)。パラパラめくっていると後ろの方にコーナーを発見し、そこでようやくチョイスの正体を知るんですね。文学部に進学したものの、絵の仕事をしたいと思い続けていた私はそれをきっかけにこのコンペに応募してみようと思い始めます。

 

Q2

他のコンペと感じる違いはありますか?

毎度異なる1人の審査員が選ぶ、というところでしょうか。毎度審査される方が異なるせいで、この人にはこの絵が響くという予想が(自分には、ですが)あまりつかなかったところです。

私は丹地陽子さんの審査で選んでいただいて、その後の年度審査でも大きく点を入れてくださったことが大賞受賞に繋がったのですが、丹地さんの作風と私の絵の作風は全く異なるように感じていたのでうれしさ以上にそのような高評価をいただけたことが意外に思いました。

 

Q3

ザ・チョイスに入選して変わったことはありますか?

入選してすぐに仕事が舞い込むようになった、ということはありませんでしたが、イラストを扱う業界の方はザ・チョイスをチェックしている方が多いんだなというのは実感しました。

いまでも時々思い出してしまうのは、当時鈴木成一さんの装画塾に通っていたのですが、何も報告していなかったにも関わらず、「出口さんがこの前のチョイスで一等賞だったんだよ!」と塾の皆さんの前で鈴木さんに突然褒めていただいたことです。うれしくて恐縮しながら、鈴木さんもチェックされていたんだなあ……とぼんやり思ったのも覚えています。

同時期頃ようやく勇気を出して営業を始めていたのですが、営業先で作品集を見せると、「この絵見たことある……あ、チョイスで見たんだ!」という反応が多くて。このコンペの注目度の高さを体感していたように思います。

 

Q4

ザ・チョイスからつながったお仕事、もしくは最近の印象に残っているお仕事を教えてください。

『MONKEY』vol.30(スイッチ・パブリッシング)収録
「絵」(アミアス・ノースコート 作)の小説扉絵

ザ・チョイスからそのまますぐに繋がったお仕事というのは残念ながらありませんでした。

しかしここ数年でザ・チョイス入選時よりも絵を成長させられたかもしれないと思っていることがあり、それは青色単色にアクセントで何色か、という描き方からすべて自然色を使ってもタッチに違和感のない描き方に発展させられたことなのですなんてことないことに思われるかもしれないのですが、タッチを作り出した当初はなかなか全体のトーンを保ったまま色数を増やすのが難しかったんです

それがうまく成功したなと思うのは最近のMONKEYvol.30(スイッチ・パブリッシング)の小説扉絵のお仕事でした。宮古美智代さんとのお仕事なのですが、MONKEYのお仕事では打ち合わせの段階で物語に合いそうな絵のイメージを存分に引き出してくださりながら、最終的にはいつも「出口さんの描きたいと思う絵を描いてくださるのが一番です!」と言ってくださり、せっかくなので何か挑戦の場にしてくださいねとおっしゃるので本当にお言葉に甘えて、毎回何かしら自分自身に課題を課して新しい試みをさせていただける大変ありがたい場でもあります!

 

Q5

これからザ・チョイスに応募したい人へのアドバイスをお願いします。

実は私は初応募から入選までに、8年もかかっているんです。その間、勤勉に毎回応募し続けた訳ではなくて、数年空いたり、応募していた時期も年に2回出すくらいの緩慢なペースではあったのですが、丹地さんの回までは最終選考まで名前が残ったこともなく、とにかくずっと箸にも棒にもかからないような状態だったんです

いまにして思えば少しずつ絵が成長していてそれが一定ラインに到達した状態の頃に掬い上げてもらったのだと思いますが、絵は描けば描くほど上手くなるものですから、諦めずに出し続けるというのはそれだけたくさん絵が描ける訳で……心が折れそうな時は私のように8年かかる例もあるということを思い出していただいて……何度も挑戦されることは決して無駄にならないと思います!

 


ザ・チョイス

次回の審査員:JUN OSONさん(イラストレーター・アーティスト)

決済ページ:https://choice229.peatix.com

 


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