【展覧会レポート】圧巻の原画がずらり勢ぞろい junaidaさん初の大規模個展「IMAGINARIUM」がスタート

『Michi』『の』『怪物園』(いずれも福音館書店)など、話題の絵本を次々に発表する画家・junaidaさんの初となる大規模個展が、東京・立川のPLAY! MUSEUMでスタートした。会期は2023年1月15日まで。

言葉での説明ではなく、とにかくたくさんの絵を浴びるように鑑賞することをコンセプトに構成された同展。「来た人が物語の中に入っていけるような展覧会にしたい」という思いから、会場デザインからカフェメニュー、グッズにいたるまで、junaidaさんのこだわりが細かに反映されている。

入口では、『Michi』の子どもたちが描かれた大きな本の壁が観客を出迎え、物語の始まりの予感に胸踊らされる。次のスペースには天井からのスポットライトを囲うように円形に吊るされた真紅の布が。その内側には同展の3つのキービジュアルの線画がプリントされている。

円の真ん中に立って線画を鑑賞する観客を、真上からスポットライトの光が照らす。これも「見る人の1人ひとりがこれから始まる展示の物語世界の主人公になるように」というjunaidaさんの計らいとのこと。

 

第1章「交錯の回廊」

大きな扉を開けると1本の道が現れ、その壁には初期の作品が1列に並んでいる。絵の中の世界が次から次に立ち現れ、まるで車窓からの眺めのようにも感じられる。

長い1本道を抜けると、突如辺りは暗くなり、行進する怪物たちの怪しい影が。1匹1匹の姿形に合わせて歩き方まで考え抜かれたアニメーションは、まるで自分が怪物たちの中に紛れこんだかのような臨場感を与えてくれる。『怪物園』を読んだ人はおっ! となるような仕かけも……?

 

第2章「浮遊の宮殿」

怪物たちの行進を抜けると、金色の装飾に彩られた空間へ。楕円形の広々とした空間に出ると、真っ先に同展の3つのメインビジュアルが目に入るだろう。原画と拡大印刷されたものと、2枚をじっくり見比べられる展示方法が採用されていて、junaidaさんの緻密で構造的な絵づくりを存分に味わえる。原画では見落としてしまうような小さな仕かけを探すのも楽しい。

また、この「浮遊の宮殿」では、junaidaさんの代表的な絵本の原画もたっぷりと鑑賞することが出来る。

 

第3章「残像の画廊」

『Michi』の原画を追いかけていくと、次はjunaidaさんの書籍装画や物語の挿絵、広告イラストレーションなど、幅広いお仕事の絵のほか、宮沢賢治作品のオマージュである『IHATOVO』のシリーズの原画も並ぶ空間へ。白を基調としたスペースが整然とした印象を与える一方、壁に所狭しと原画が飾られていて、空間全体がどこか不思議な雰囲気を醸し出している。

 

 

第4章「 潜在の間」

最後に観客たちを待ち受けるのは、真紅のビロードで飾られた「潜在の間」。それまでのファンタジックな世界観と一線を画し、どこかダークな空気を纏った作品が並ぶ。ミヒャエル・エンデ『鏡のなかの鏡』へのオマージュや、画集『UNDARKNESS』の原画が静かな空間に浮かび上がってくる。

真紅の円形の空間は、入口すぐの展示を想起させる。全体をとおして、それぞれの展示空間がリンクする構成が光っている。

「潜在の間」を抜けると、グッズ売り場の前には絵本を読むことの出来るスペースも。絵本と原画の違いを探してみるのも面白いのではないだろうか。

よく見ると、ポットの中に……?

また、同展の開催に合わせて制作された図録も必見。junaidaさんの絵の特長を活かすために練られたレイアウトはもちろん、4種類の紙を使用しており、それぞれの印刷の違いも見応えがある。

キャプションや解説がほとんどなく、ただただ作品世界に没入するために作り上げられた同展は、次から次に新しい発見があり、作品数にもその緻密さにも圧倒されること必至。たっぷりと時間を使って1枚1枚の絵の世界に浸るために、時間に余裕を持って足を運ぶことをおおすすめしたい。

 

〈プロフィール〉

junaida(ジュナイダ)/画家。1978年生まれ。京都府在住。Hedgehog Books代表。『HOME』(サンリード)で、ボローニャ国際絵本原画展2015入選。第53回造本装幀コンクール・日本書籍出版協会理事長賞(児童書・絵本部門)を『Michi』(福音館書店)が受賞。翌年に同賞を『怪物園』が受賞。ミュンヘン国際児童図書館発行の「ホワイト・レイブンズ-2021」に『怪物園』が入選。最新刊に『EDNE』(白泉社)、近著に絵本『Michi』『の』『怪物園』『街どろぼう』(いずれも福音館書店)、画集『UNDARKNESS』(Hedgehog Books)など。

https://www.junaida.com

 

 

 


junaida展「IMAGINARIUM」

会場:PLAY! MUSEUM

〒190-0014 東京都立川市緑町3−1 GREENSPRINGS W3棟 2F

TEL:042-518-9625

会期:2022年10月8日(土)~2023年1月15日(日)

会館時間:【平日】10:00〜17:00(入場は16:30まで)
【土日祝】10:00〜18:00 (入場は17:30まで)

入場料:一般1,800円、大学生1,200円、高校生1,000円、中・小学生600円

※チケット情報に関してはこちらをご覧ください


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