世界最大規模のイラスト・アートコンテストである「コピックアワード2024」の最終審査結果が発表され、林芊語CYLさんによる「阿嬤的章魚小丸子」がグランプリに輝いた。
「コピックアワード2024」は画材ブランド〈コピック〉を製造・販売する株式会社トゥーマーカープロダクツが主催する作品コンテストで、今年は世界70カ国から3639点もの応募があった。
審査員は、漫画家の板垣巴留さん、画家の落合翔平さん、イラストレーターの中村佑介さん、デザイナーの根津孝太さん、クリエイティブディレクターの箭内道彦さんの計5名。審査期間中にすべての作品に目を通し、満場一致でグランプリが選出された。
今回グランプリを受賞したのは、台中の夜市のたこ焼き屋台で働く年配の女性を描いた「阿嬤的章魚小丸子」。作者の林芊語CYLさんは、たこ焼きをひっくり返していた女性がふと頭を上げ、自分に温かな笑みを浮かべた瞬間をカメラに収め、その一瞬を永遠に残すために作品を制作したという。作品には台湾の夜市文化をいとおしむ気持ちも込められている。台湾の夜の街を活気づける屋台の光を、鮮やかで印象的な色彩で表現した1枚だ。
そのほか準グランプリ2作品には、囲さんの「クルグル」、紅梅アヤさんの「ズキュン」が選出された。
最終審査を終えて、応募作品全体のレベルの高さに驚いたというイラストレーターの中村佑介さん。グランプリ作品が満場一致で決まったことに対し、「いい作品には多面的なよさがあり、それぞれ別のポイントで各審査員の胸を打ったと思うと感動的です」とコメント。
モチーフの決め方について、中村さん自身は「関連するものを連想ゲームのように採用し、それぞれが絵の中で遊んでもらえるように選んでいます。パッと見て目に留まるきれいさや迫力も大事だと思いますが、見た人が絵に没頭して、小説や漫画をじっくり読み込むような感覚でなるべく長い時間見てもらえるようにモチーフを決めています」と、教えてくれた。
また、審査員を務めるのが3回目だというデザイナーの根津孝太さんは「毎回、会場に来て、実物を目にすると作品が持つ熱量に圧倒されます。その人のこだわりや好きという想いが伝わってくる作品に目を引かれますね」と各作品からのパワーを感じ取った様子。
普段はデジタルツールでの制作が中心だが、煮詰まった際にはアナログ画材に立ち返ることが救いになっているという根津さん。インクや紙といった実体のあるものからしか得られないエネルギーがあるという。「前に進めなくなったら一度原点に戻って描きたいものを描く、自分を追い込んでしまっている思考から自由になって手が動くままに描くといったことを意識的にしています」と、創作の苦しみから抜け出すためのヒントを授けてくれた。
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