『サイトウユウスケ作品集 YOUTHQUAKE』発売記念インタビュー

写実的な表現で、書籍や雑誌の表紙、広告、ファッション、音楽関連など幅広いジャンルで活躍するイラストレーター・サイトウユウスケさん。今年画業20周年を迎え、その活動を俯瞰する作品集『サイトウユウスケ作品集 YOUTHQUAKE』が玄光社から1月31日(火)に発売された。

今回はその発売を記念し、サイトウさんにインタビュー。20年を振り返り思うことや、作品集の見どころなどをお聞きした。

また、画業20周年となる記念すべき年の展示第一弾としてキャリア初の京都での個展も藤井大丸 7galleryで2月15日(水)まで開催中だ。作品集は会場でも購入可能なので、ぜひ併せてチェックして欲しい。

 


──20年間の画業を振り返り、ご自身の中で変化したと感じることはありますか?

もともと器用貧乏なところがあったので、初期の頃は自分の中で絵を描く上でタッチやツールなどに制限をかけて、その中で表現出来ることを模索してました。自分の作風が出来上がっていく中で徐々にその制限を緩くしてきました。また時代の変化と共にイラストレーションに対する価値観もずいぶん変わりました。20年たったいまは昔では考えられないような絵を描いています。

 

──音楽関連、映画ポスターなどのお仕事で、ミュージシャンや俳優などの実在する人物を描くことが多いですが、描く時に難しさを感じるポイントはありますか? また、どのようなことを意識して描いていますか?

描くことに集中しすぎるとゲシュタルト崩壊のように似ているか似ていないか、分からなくなる時があります。いい意味で絵との距離感を保ちつつ、その人らしい魅力的な部分を見付けることが大事だ思っております。

日本コロムビア/吉井和哉「ヨシー・ファンクJr.〜此レガ原点!」ジャケット/2014

 

──これまで手がけた仕事で特に印象深かったものを教えてください。

学生の頃から俺は絶対『ミュージック・マガジン』(ミュージック・マガジン社)の表紙のイラストレーターになると言っていたので、表紙のレギュラーが決まった時は飛び上がるほどうれしかったです。またYohji Yamamoto 2018SSのコレクションで私の絵をプリントしたシャツをSadsの清春さんがアー写とMVで着用してくれたときはマジで泣きました(笑)。十代の頃ファンクラブに入るほど憧れていた方なので、この時のために俺は絵を描いていたんだと思えるくらい感激しました。

ミュージック・マガジン/『ミュージック・マガジン』2011年12月号 雑誌表紙/2011

 

──近年取り組んでいる「Chack and the Girl」シリーズは、特に女の子と猫の自然な仕草や表情が印象的です。ご自身も「過去の自分と向き合い、受け入れるプロジェクトである」と語っていますが、どのようにして描き出しているのでしょうか?

自分自身を投影している部分もあるけど、背景などはあまり描かないようにして時代や場所を特定せず、鑑賞者の想像に委ねてる部分も多いです。その分、想像を掻き立たせるヒントとなるようなギターだったり洋服やスニーカーなどのディテールをしっかり描いて、絵の中に宿る空気感を大切にしています。

オリジナル「Chack and the Girl」個展作品/2020

 

──『サイトウユウスケ作品集 YOUTHQUAKE』の表紙は2019年に描かれたオリジナルで、正面を見詰める女性が印象的です。この作品を選んだ理由はどんなものでしょうか?

狙わずに自分の中でよく描けたと思える作品だったからというのが大きいです。その後の「Chack and the Girl」シリーズにも通ずる空気感も持っているかなとも思います。

よくこの女性は「Chack and the Girl」の女の子ですかと聞かれますが、そこはご想像にお任せします。

 

──作品集のこだわりや特に見て欲しいところを教えてください。また、デザイナーの大島依提亜さんとどのようなやりとりがありましたか?

いまはSNSでいくらでも絵の画像は見られますが、作品集を出すからにはモノとしての存在感があるといいなと思って作りました。

そういったところを大島さんが汲んで、紙の選定や表紙のしかけなど素敵に仕上げていただきました。お部屋に飾ったり、カバーをはずしてみたりお楽しみくださいませ。

 

──これから挑戦したいこと、今後の予定について教えてください。

今年の後半には東京でも個展の予定もありますし、まだ言えないですが新しいプロジェクトも計画していたりします。

“とりあえずやってみる”の精神を忘れずに挑戦していきたいです。

 


サイトウユウスケさんの個展が開催中です

京都・藤井大丸の7galleryで開催中の個展では、「Chack and the Girl」シリーズの新作が展示されています。これまで主にデジタルで描いてきた同シリーズを、改めて初心に立ち帰り肉筆によって制作したのだそう。サイトウさんに語っていただいたような女の子が身に着けるアイテムや筆致など、ぜひ細部までお楽しみください。

「The Same As Usual」

会期: 2023年1月21日(土)〜2月15日(水) *2月7日(火)休

会場: 7gallery

住所:京都府京都市下京区貞安前之町605番地 藤井大丸 7F(Google Map

時間: 10:30〜19:00

 

<プロフィール>

1978年生まれ。2003年バンタンデザイン研究所イラストレーション専攻卒業後、フリーのイラストレーターとして活動。主にデジタルによるペインティング作品を制作。これまでに『ミュージック・マガジン』表紙(2008年4月号~2014年3月号)、CXドラマ「続・最後から2番目の恋」ポスター、吉井和哉カバーアルバム「ヨシー・ファンクJr.~此レガ原点!! 」他にイラストレーションを提供。また近年ではYOHJI YAMAMOTONEW BALANCEとコラボレーション、ロックバンド髭(HiGE)のミュージックビデオの監督をするなどさまざまな媒体で活動中。

 


『サイトウユウスケ作品集 YOUTHQUAKE』(玄光社)

クライアントワークを中心に、展覧会などで発表したオリジナル作品を加え、あえて仕事ジャンルなどできっちり分類しないノンストップミックス的な誌面構成で、その20年にわたる活動を俯瞰する作品集です。


関連記事