絵本作家・石津ちひろさんによる、なぞなぞ絵本『なぞなぞのにわ』が10月に刊行された。本作は、絵の中からなぞなぞの答えを見つけ出して遊べる絵本シリーズの第4弾だ。
シリーズの最新作となる今回、石津さんのパートナーとして絵を担当したのは、過去にザ・チョイス大賞も受賞しているイラストレーターの中上あゆみさん。この作品では、季節ごとにさまざまな表情を見せる美しい庭の絵を、緻密なタッチで描き上げた。
中上さんは、この絵本を担当することになったきっかけを、2017年に行われたザ・チョイス大賞展だと話す。刊行を記念して、自身初となる絵本作りに挑戦した彼女に、この作品の見どころや制作の苦労について伺った。
――絵本の依頼のきっかけについて、教えて下さい。
絵本の編集者さんに2017年のザ・チョイス大賞展で絵をご覧頂いたことがきっかけでした。その時の「猫のひたいほど」という絵は今回の絵本の表紙にも使って頂き、そちらの庭の絵が基になって絵本『なぞなぞのにわ』が完成に至りました。
――この絵本の見どころ、注目して欲しい点はどこでしょうか。
担当した編集さんと同じ意見なのですが、お子さんはもちろん、手にとって下さる大人の方々にも楽しんで頂きたいなと思って作りました。絵の中には、なぞなぞの答え以外にもさまざまなモチーフが隠れており、いろんな生き物のほかに数字や文字なども隠れています。ぜひ探してみて頂ければうれしいです。
そして石津ちひろさんのなぞなぞは面白いだけじゃなく、ふわっと優しい言葉で綴られているので、読んでいて心地よいです。ほかにも同シリーズのなぞなぞの絵本を3冊出されているのですが、そちらもとっても面白いのでぜひ合わせてご覧頂きたいです。
――中上さんにとっては、今作が初めての絵本でした。苦労したのはどんな点でしょうか。また、イラストレーションと絵本で、制作に違いはありましたか?
初めての絵本で分からないことだらけだったのですが、編集の方が丁寧に段取りして下さったので楽しく作画作業に取り組むことが出来ました。
具体的に苦労した点は人物を描くことです。いつもは植物ばかりを描いていたので、人の表情や髪型、特に服装にとても悩みました……。
イラストレーションも絵本も、色々な方の希望や意見が目標に向かって形を成していく経過は一緒のように思います。ただ絵本の場合は、自分の描きたいものをより積極的に表現して取り組む必要があるので、アート的な要素と言いますか、広告やパッケージと比べると自分の考えを反映する割合が高いように感じました。
――作者の石津さんや、編集の方とはどのようなコミュニケーションがありましたか。
石津さんと直接お話はしなかったのですが、間に入っている編集さんと、まずはページごとの主なキーワードやモチーフを5個程度決めました。それを石津さんにお伝えしつつ、ご希望も伺いながら、実際に描いた絵を基になぞなぞを書いて頂くという段取りで進みました。
私はいま鎌倉に住んでいるのですが、編集者さんが打ち合わせの際にわざわざこちらまで来て下さり、お庭の綺麗なカフェで絵本の打ち合わせをしました。いろんなお話をしたのも、とてもよい思い出になっています。
――今後さらに挑戦してみたいことはありますか?
絵本の制作は本当に楽しかったので、また絵本を出す機会があれば最高だなぁと思います。
<プロフィール>
なかうえあゆみ/1979年徳島県生まれ。ジャン=ポール・エヴァンパッケージ、無印良品ボトルパッケージなどのイラストを手がける。2018年東京オペラシティアートギャラリーにて開催の谷川俊太郎展では庭のイラストを担当。イラストレーション2017第34回 ザ・チョイス年度賞大賞、第16回イラストノート展大賞を受賞。絵本は今作が初めて。
『なぞなぞのにわ』(偕成社)
春夏秋冬……季節ごとにさまざまな魅力を見せる庭の絵の中に、なぞなぞ50問の答えが描きこまれています。石津さんのリズミカルな響きが楽しいなぞなぞ、中上さんが緻密に描いた庭の絵を楽しめる1冊。