『イラストレーション』No.236より「FF14」リードアーティスト 茂木雄介さんのインタビューを紹介!

「FF14」を54ページにわたって特集した『イラストレーション』No.236。その内容の中から、同作のリードアーティストである茂木雄介さんのインタビューを一部抜粋してご紹介します。

 


インタビュー

「FF14」リードアーティスト 茂木雄介

 

心惹かれるキャラクターや、豊かな装飾が施された装備品、冒険の舞台となる壮大な背景……。「ファイナルファンタジーXIV」を形づくるそれらのコンセプトを、他者と共有するために視覚化したビジュアルイメージ「コンセプトアート」に仕立てる茂木雄介さん。

ゲームづくりに夢中な少年だったという茂木さんに、リードアーティストとして活躍するまでの道のりや、信頼の置けるアートチームのこと、そしてご自身の制作活動について、語っていただきました。

茂木雄介

リードアーティスト。スクウェア・エニックス入社後、デジタルエンタテインメント事業の開発部門において「アンリミテッド:サガ」、「ロマンシング サ・ガ」、「ラスト レムナント」などのゲーム制作を担う。パッチ3.X「蒼天のイシュガルド」シリーズから「FF14」チーム所属。

 

——子どもの頃からゲームがお好きだったと伺いました。絵もその頃から描かれているのでしょうか?

ゲームは本当によくやっていました。自分でやるのも好きだったんですけど、小学校の休み時間によくゲームを作って、友達にプレイしてもらっていましたね。ノートにエリアのマップを描いて、サイコロを振って進んだマスでモンスターと戦うだとか、いろんなイベントが起きるとか、そういったサイコロ系のゲームでした。横のページにはモンスターをたくさん描いておいて、またサイコロを振るとどのモンスターと戦うか決まる、という。

当時はゲーム会社に入るとは思っていませんでしたし、絵もゲームを作るために描いていましたね。大学は美大に行きましたけど、正直な話、バイクに乗るかゲームをやるかって感じで、好きなことしかしていませんでした(笑)。

——美大では何を学ばれていたんですか?

インダストリアルデザインを学んでいました。モトクロスのプロテクターなどをデザインしていたので、絵を学んでいたわけではないです。むしろ絵は得意じゃない方なので、〝絵を描くこと〟が自分の制作活動のピークではありませんでした。

ただ、いま考えるとインダストリアルデザイナーって製品の使い勝手や機能を考えてデザインすべきなのに、僕はゲームや漫画が好きな人間なので、見た目を優先してデザインしていたところが、そもそもずれていたんですよね。そのあたりから気持ちが変わっていって、卒業後に父がやっている広告代理店で広告の勉強をさせてもらっている時に、ゲーム会社を受けてみようかなと考えました。

しかも最初はゲームの開発じゃなくて、販促物やパッケージのデザインが出来ないかな? と思っていたんですよ。それでスクウェア・エニックスの面接を受けたら、「ここでは販促物やパッケージのデザインはしてないよ」って言われて(笑)。ただその時に、「ゲームを作ってみないか?」と誘ってもらえらえたので、入社することになりました。だから、絵やモデリングなどのゲーム関係に必要なスキルは、入ってから学んでいきました。

 

——入社されて「FF14」に携わる前はどのような仕事をされていたのでしょうか?

「アンリミテッド:サガ」や「ロマンシング サ・ガ」、「ラスト レムナント」のモデリングなどをしていました。キャラクターの動き以外は大体自分で作っていましたね。いまと違って昔はデータが簡単だったので、1人で担当出来る幅が広かった、というのが正直なところです。

それから次世代機の検証だとか、実験的なチームに配属されていろいろやったんですけど、やっぱりテクニカルなことよりもアーティスト的なことをやっていきたいと思って、パッチ3.X(*1)「蒼天のイシュガルド」シリーズから「FF14」チームに入りました。

(*1)パッチ……アップデートを意味するが、「FF14」においてはパッチと表記する。後ろにつく数字が何回目のアップデートなのかが一目で分かるように付記される。

 

——「FF14」のアートチームはどのように担当が分かれているのでしょうか? また、その中で茂木さんはどのような役割を担っているのか教えてください。

大きく分けて、キャラクターアートチームとBG(バックグラウンド)アートチームがあります。キャラクターアートチームは、キャラクターに付随するもの、例えば装備品や「ミニオン」、モンスター、NPC(ノンプレイキャラクター)のデザインなどをしています。BGアートチームは、その名の通り背景アートですね。ロケーションの全体イメージから、エリア内に存在する建築物や細かな設定を持つ家具まで幅広くデザインしています。どちらかというと、モデリングしやすいように精密な作業を求められるのがキャラクターアート、広範囲でスピードを求められるのがBGアートです。

僕はリードアーティストなので、自分でコンセプトアートを描くほかに、品質管理的な部分で「これはちょっとずれてるんじゃない?」と、アートチームのアーティストたちに指摘することはあります。ただ、基本的にみんなしっかりやってくれているので、細かく言わなくても大丈夫です。ちょっと言い方は悪いですけど、僕は全然、楽なもんです(笑)。

——コンセプトアートを描かれる上で大切にされていることがあれば教えてください。

既視感はなくしたい、常に新しいものを作りたいという思いはあります。新しいものを提供しないと、リリースを待っているお客さんに新鮮な気持ちでプレイを継続していただけないことは分かっていますので。その度にインフレが起きて、自分で自分の首を絞めているのが現実なんですけど、新しいものを作ることは、本当に重要です。ただ、実装可能かというところのせめぎ合いがどうしても起きてしまうので、そこは慎重にやっています。

 

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本誌ではさらにお仕事に関するエピソードやご自身の創作についてもお聞きしているほか、今号の表紙を描き下ろしていただいた長嶺裕幸さんのインタビューも収録しています。

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『イラストレーション』No.236

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