イラストレーターに聞く“5つの質問” 第6回 西山寛紀さん

『illustration FILE 2020』の巻頭企画「イラストレーターに聞く“5つの質問”」。そこには、イラストレーターのみなさんの実感の伴った言葉が多数掲載されています。COVID-19の感染拡大によって、さまざまな変化があった2020年。イラストレーターの方々は何を考え、感じ、どのように絵を描いていたのでしょうか?

本記事では、掲載された方々の中から編集部が12名をピックアップし、当時の回答をそのまま紹介します。第6回目に登場するのは西山寛紀さん。フォルムや色使いが印象的な西山さんの作品は、どのような思考をとおして生み出されているのか、ご回答に注目です。

(連載のまとめはこちらから)

 


西山寛紀

1985年生まれ。多摩美術大学大学院修了。書籍、雑誌、広告等、幅広い分野でイラストレーションを手がける。16年ザ・チョイス年度賞入賞、17年ONE SHOW MERIT、HBファイルコンペ副田高行賞、19年ADC賞ノミネート。TIS会員。

Web:https://hirokinishiyama.tumblr.com

 

Q1

2020年代のイラストレーションの変容や拡張、 イラストレーターとしての在り方の変化を感じますか? または、現在具体的に自身の活動で力を入れていることは?

長い間公募や個展などがイラストレーターが世に知られるきっかけになっていましたが、それと同等に個人のSNSが窓口となり、直接仕事依頼がくることが多くなったように感じます。なので自分の興味があったり、大切にしていることを絵にしてSNSで発信し続けている人は、相性のよい依頼に巡り合う確率が高いのではないでしょうか。また、イラストレーションはその都度目的があるので、自分の世界観を活かした回答ができれば次の仕事につながると思います。理想を言うならば、制作のなかで新しい発見をし、創作活動における知見や表現をアップデートし続けられるとその後の活動も興味深いものになっていくと感じます。

 

Q2

仕事や自主制作の時に使用する画材や紙、デバイス、ソフトウェアはどういったものですか?

アイデアスケッチは紙に鉛筆、ラフから清書まではPhotoshop(iPad Proの導入も検討中)。 展覧会ではほぼアナログで描いた原画がメインで、板もしくは紙にアクリル絵具で着彩します。

 

Q3

イラストレーションや絵画、デザイン、写真、映像などの視覚表現で、2019年印象に残ったものは?

一乗ひかるさんの仕事。イラストレーションとグラフィックデザインの領域の境界を融解させているような印象を受けました。グラフィックデザインでは佐々木俊さんの仕事。普遍性がありながらもどこか新しい。ポスターや本でも情報を読み取るのが楽しくなり、グラフィックデザインってよいな!と脳内の眼福センサ ーが唸ります。あと、スイスのFREITAG(製品も、製品を愛用している人も、店内ディスプレイも)には年中視覚的に創作意欲を刺激されます。

 

Q4

絵を描く時の思考や技術の礎、実作業の時の着想源や資料として利用するものはどんなものですか?

表現様式の枠組を設定し、そのなかで創意工夫を凝らしてユニークな案を模索しながら制作するのですが、その意識は好きなミュージシャンの音楽やプレイスタイルから影響を受けていると思います。着想源は日常的な体験がほとんどですが、実制作においては、制作中に何らかの新鮮味を感じるアクシデントが画面に現れた時に「完成の決定打」をインスパイアされることが多いです。また、好きな音楽は絵の佇まいのニュアンスやムードのチューニングにおいて重要な役割を担っています。

 

Q5

仕事をするなかで気をつけていること、知っていてよかったこと、今後身につけたい技術や知識は?

絵単体の佇まいも大切ですが、仕事ではグラフィックデザインとして文字と合わさった時に伝わる意味や視覚的な旨味を意識して制作しています。今後は、絵の世界観に見合うものを三次元的な媒体(製品や立体物)に展開することに興味があります。

 


※本記事は『illustration FILE 2020 下巻』の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承下さい。

『illustration FILE 2020 下巻』(玄光社)


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