イラストレーターに聞く“5つの質問”  第7回くぼあやこさん

 

『illustration FILE 2020』の巻頭企画「イラストレーターに聞く“5つの質問”」。そこには、イラストレーターのみなさんの実感の伴った言葉が多数掲載されています。COVID-19の感染拡大によって、さまざまな変化があった2020年。イラストレーターの方々は何を考え、感じ、どのように絵を描いていたのでしょうか?

本記事では、掲載された方々の中から編集部が12名をピックアップし、当時の回答をそのまま紹介します。第3回目に登場するのは、子育てをしながらその日常を切り取ったイラストを描く、くぼあやこさんです。

(連載のまとめはこちらから)

 


くぼあやこ

オリジナル作品「slice of Life」

山形県生まれ。ボローニャ国際絵 本原画展入選。入選作がフランス にて出版。これが初仕事となる。 2012年HBファイルコンペ副田高 行賞。書籍、雑誌、広告等で活動中。 2019年『育児百景 Slice of Life』発売。

Web:http://www.kuboayako.com

 

Q1

2020年代のイラストレーションの変容や拡張、 イラストレーターとしての在り方の変化を感じますか? または、現在具体的に自身の活動で力を入れていることは?

私はイラストレーターである前に、3歳児と5ヵ月の赤ん坊の世話をするのが日常です。そのため、ライフワークとして「生活百景」という子育て風景を切り取った絵を描いてSNSに投稿していて、昨年『育児百景 Slice of Life』という本にもなりました。最近は子どもが2人いるので動きが複雑になり、1コマで収まらなくなってきた光景をどう表現するかが課題です。

 

Q2

仕事や自主制作の時に使用する画材や紙、デバイス、ソフトウェアはどういったものですか?

以前はクレヨンで描いていましたが、子どもが生まれてから鉛筆で描き始めました。赤ん坊が泣き出した時に手を洗わなければならないのが億劫で、 鉛筆ならすぐに対応できると消去法で。今はiPad ProとProcreateで描いています。以前はラフだけでしたが、最近は本描きも同じ方法です。子育ての合間、隣で子どもが寝ている暗い寝室でも描けるのが最高です。今は子どもの状況に合わせて、方法を変えることを楽しんでいます。

 

Q3

イラストレーションや絵画、デザイン、写真、映像などの視覚表現で、2019年印象に残ったものは?

 Adrian Johnsonの ユ ニ ク ロ『LifeWear maga-zine』表紙。見た瞬間「イラストレーション 力!」と(心のなかで)叫びました。もう1点は『イラストレーション』2020年3月号、福田利之さんが手がけた表紙。ロゴまで描いてる〜と度肝です、度肝。イラストレー ターって「私が私が!」と前に出る人は少ない気がします。 ただこの2人のような、静かながらすごい仕事を見てしまうと「イラストレーターってすごい!」と勝手に感動して、 そんな仕事ができたらと思います。

 

Q4

絵を描く時の思考や技術の礎、実作業の時の着想源や資料として利用するものはどんなものですか?

今は「生活」そのものがモチーフ。子育て中しか起きないなという風景に出くわした時に描きたくなります。「生活百景」のきっかけになった最初 の風景も、添い乳(添い寝をしながら授乳すること)しながらスマホを見ている自分。「我ながら変な格好してるな」と思い、記録として描き始めました。その上で大事にしているのは、余計なものを描くこと。仕事では情報を整理して描くことが多いですが、自分が描きたいのはそのまわりにある余計なものでは?  と思い至り、散らばった玩具、ソファの上の衣類、置きっぱなしの食器などを意識して描い ています。

 

Q5

仕事をするなかで気をつけていること、知っていてよかったこと、今後身につけたい技術や知識は?

相手が何を求めているか、打ち合わせやメールのやり取りで探ります。その上で、「こちらはどう?」と違った角度を提案したり。自分を更新していきたい気持ちからかもしれません。以前は素敵な空気をまとった絵を描きたかったのですが、今は実存が感じられるものを描きたい。そのためにもっと人間を上手く描きたいです。

 


※本記事は『illustration FILE 2020 上巻』の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承下さい。

『illustration FILE 2020 上巻』(玄光社)


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