『illustration FILE 2022』巻頭企画「イラストレーターに聞く“5つの質問”」。そこには、イラストレーターのみなさんの実感を伴った言葉が多数掲載されています。新型コロナウイルスの影響が色濃く残っていた2022年。日常の在り方が刻一刻と変わっていく中で、イラストレーターの方々は何を考え、感じ、どのように絵と向き合っていたのでしょうか?
本記事では、掲載された方々の中から編集部が12名をピックアップし、当時の回答をそのまま紹介します。第4回目に登場するのは、「Happy Wow (ハッピーワオ)!」をテーマに、カラフルで楽しい広告や書籍、CMなど、さまざまなイラストレーションやアニメーションを手がける引野裕詞さんです。
(連載のまとめはこちらから)
引野裕詞
1983年島根県生まれ。大阪デザイナー専門学校卒業。「Happy Wow (ハッピーワオ)!」をテーマに、人が思わず「Wow!」と楽しく幸せに感じる作品を目指す。大阪・海遊館30周年広告TV-CM担当。19年大阪マラソンメインビジュアル公募最優秀賞。
ウェブサイト:https://www.uramabuta.com
Instagram @yhikino_illust
X(旧Twitter) @yujihikino
Q1
「イラストレーション」という言葉の持つ意味合いが多様化する昨今、イラストレーターの仕事をどう捉えていますか? また、イラストレーションに感じる希望や可能性、ご自身が力を入れていることは何ですか?
イラストレーションというと「物事を分かりやすく伝える役割」が大きいと思いますが、私は「人の心をときめかせる力」に強く魅力を感じています。実際その力をさらに発揮できるWebサイト・SNSキャンペーンなどへの利用が拡大していますし、人の心を動かす1つの手段としてイラストレーションの活躍の場が急速に広がっている印象があります。また近年はBehanceなど海外向けのポートフォリオ作成が簡易になっているのと、翻訳も自力でしやすくなったので、言語の壁が薄れ海外展開の可能性が大いにあるなと感じています。とはいえ、今年から中国のエージェントとも契約したこともあり、海外エージェントと組むことでもより進出しやすくなると実感しています。
Q2
仕事や自主制作の時に使用する画材や紙、デバイス、ソフトウェアはどういったものですか?
iMac 27インチで、ラフはPhotoshopとWacomの液タブを使って描き、それを基に色鉛筆で描き直して仕上げています。
Q3
新型コロナウイルスによる日常生活や仕事の変化、影響はありましたか?
地方在住なので東京・大阪への営業が難しくなり、直接営業できないことを前提に、SNS発信に注力しました。主にTwitterに重点を置きましたが、依頼されるほとんどの方がそれを見てくださり、お問い合わせがかなり増えました。また特に今までは広告代理店・制作会社から来ていた問い合わせを、クライアントとなる企業や大学、施設の広報・デザイン部署から直接連絡頂くようになりました。コロナ禍によって自前で作家を探す体制(内製化)になった方々が多くなったのが、大きな変化だなと感じました。
Q4
絵を描くときの思考や技術の礎、実作業の時の着想源や資料として利用するものはどんなものですか? また、2021年印象に残ったものは?
着想源としては、主に経済誌などを参考に考えています。世の中で何が起こっているのか?そうであれば今後どんなイラストレーションが必要なのかと逆算して考えます。例えば、SDGsなどが経済誌では早くから話題になっており、企業のビジョンとして必ず必要とされる機会が増えると思い、それにまつわるキーワードを調べてオリジナルで作品を作り溜めました。
Q5
実際に仕事をする上で気をつけていること、知っていてよかったこと、今後身に付けたい技術や知識は?
気をつけていることは、依頼されるディレクター、デザイナーの方がやりやすいように柔軟に対応することです。もともとWebプロダクションでディレクターとして働いてたので、イラストレーションの意図をそのままクライアントに出せる形で文章にまとめたり、企画内容を一緒に考えたりと「半分相手の業務領域に入っていくこと」で、信頼できるパートナーとして意識してもらえるよう行動しています。またWeb制作していたので、Webサイトでのイラストアニメーションの提案、派生してSNS用のイラストアニメーション提案もできるようになったので、よかったなと感じています。
※本記事は『illustration FILE 2022』下巻の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。