週の始まりに、絵本や漫画、創作に関する書籍などを中心に、楽しく読める1冊をご紹介する本連載。お昼休憩や帰宅後の時間のお供に、はたまたお子さまへの読み聞かせに……。気になる本に出会ったら、ぜひ手に取ってみてください。
第2回でご紹介するのは、坂上暁仁さんによる漫画『神田ごくら町職人ばなし 〈一〉』(リイド社)です。
『神田ごくら町職人ばなし〈一〉』
坂上暁仁 著(リイド社)
1,000円+税 装丁:中山望
「金なんざどうだっていい。心意気の話さ。わかるだろ?」
圧巻の描写でよみがえる、江戸職人の技と意地。職人たちの手仕事をドラマと共に描き、「このマンガがすごい!2024」オトコ編で第3位を獲得した注目作。
職人による手作業の伝統は、機械化が進んだ今日においても私たちの暮らしの中に息づいています。同作で描かれるのは、そんな職人たちのドラマ。この巻で登場するのは、「桶職人」「刀鍛冶」「紺屋」「畳刺し」「左官」です。
登場人物の動きは無駄なく正確に描かれ、その滑らかさから描かれたその一瞬の前後まで見えるよう。また、人物以外にも、素材の手触りや、炎の光や熱、蔵に差し込む光など、どの場面にも溜め息の出る美しさと説得力があり、つい手を止めて見入ってしまいます。
1つひとつの題材に対する作者の徹底したリサーチと、大胆な構図、温度や匂いまで感じられるような描写を叶える圧倒的な画力で成り立った1冊。ひとたびページを開けば、江戸に生きる彼らの生き様が、すぐ目の前に見えてくることでしょう。
※「トーチWeb」では2話まで+最新話が公開されています。