画集出版記念・イケガミヨリユキさん特別インタビュー

8月末に2冊目の画集を出版するイケガミヨリユキさん。今回はその発売を記念して、イケガミさんに話を聞きました。

 

影響を受けたもの

――イケガミさんの作品を初めて見たのは「ホルベイン画材」とコラボした「ザ・チョイス」の審査でした(審査員は宇野亞喜良さんとヒグチユウコさん)。あの時の入選作品は写実的なタッチで描かれたアホロートルでしたよね。当時はいまの作風とは少し違った作品を描かれていたのでしょうか?

 当時はデッサンのように描きこんでいく方法が楽しくて、若干写実的な絵を描いていました。だんだんと登場人物メインの画面ではなく、大きな世界の中に登場人物がいる感じのものを描きたくなってきて、現在描いている作品に近付いていきました。

 生き物を描くのはいまも変わらず好きなので、時々動物園や水族館にデッサンしに行ったりします。

「ウーパールーパー色」
2014年、ホルベイン×ザ・チョイスの特別企画「クロッキーメモを作る」で入選した際の作品。

 

――イケガミさんは歴史小説を読むのが好きと聞きました。今回の作品集にも収録していますが、弁慶と義経などをモチーフにしている作品がありますね。歴史をテーマにした作品を描く楽しさ、難しさについて、教えてもらえますか?

 大学時代は義経が幼年期を過ごした鞍馬の近くに住んでいて、よく鞍馬の山やお寺に行っていました。歴史的な記録がある場所に行くと何百年、何千年も前から人間という生物の営みが続いているんだなと思えて、その瞬間に満ち足りた気持ちと同時に恐ろしさも感じます。そういう場所に行くのが好きで、その場に行った記録を絵として残そうと思って描き始めたのを覚えています。

 歴史ものの絵は資料を集めることによく苦労します。髪型や甲冑も時代によって形式が違ったりとか。そして歴史上とは言え、実在した人物を描かせて頂くので失礼のないようにしたいな……とか色々考えます。

「牛若丸と弁慶」

 

――個展ではアナログで描かれた作品を発表していますが、SNSではデジタル作品も発表していますよね。デジタルとアナログはどのように使い分けているのでしょうか?

 絵として残しておきたいと思ったものは絵具で描くことが多いです。デジタルは肩の力を抜いて描けているので思い付いたものをそのまま描いています。クロッキー帳に描く感覚に近いです。

 

 

新しい作品集とこれから

――作品集では表紙を描き下ろしてもらいました。言わば作品集の顔とも言える作品ですが、描く上で注意したことはありますか?

 表紙の絵は、作品集に掲載する作品がほぼ決定してから描き始めました。せっかくなので中身の集約となるような絵にしたいと考えました。前回の作品集の『PETALS』は部屋の中を描いた絵が多かったのですが、今回は登場人物が屋外に出ている作品が多くなっていたので、屋外の景色を描きました。色の雰囲気も前作の表紙と大きく異なるものにしたかったんです。

『イケガミヨリユキ作品集』の表紙を飾る、緑豊かで幻想的な作品。

 

――これから挑戦したいこと、今後の予定について教えて下さい。

 コロナウイルスの影響で今後どうなっていくのだろうかと不安はありますが、また以前のように展示をしたり、見に行ったりしたいです。自粛期間以前も現在も1人で絵を描くという生活に変わりはないのですが、自粛期間を経て対人的な活動も大事だなと思うようになりました。気兼ねなく外に出られることが出来るようになって、人と仕事をする機会がもっと増えるといいなと思います。

 

<プロフィール>

イケガミヨリユキ/1993年生まれ。画家・イラストレーター。2019年「ボローニャ絵本原画展」入選。作品集に『PETALS』(ブックギャラリーポポタム)がある。

 


 

『イケガミヨリユキ作品集』

日本をはじめアジア地域を中心に人気を集める画家イケガミヨリユキさんの2冊目の作品集。前作品集『PETALS』以降に描いた作品を中心に100点以上を収録。アナログ作品の他、SNSなどで発表したデジタル作品も掲載しています。2,500円+税(玄光社)8月31日より全国の書店にて順次発売。

 

 


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