ながしまひろみさんによる漫画『鬼の子』が刊行 青山ブックセンター本店で刊行記念原画展も

イラストレーター・漫画家として活躍するながしまひろみさんが手がけた、新作漫画『鬼の子』(小学館)が12月9日に2巻同時発売された。

同書は、ながしまさんがWebメディアで2年にわたって連載していた作品の書籍化。小さなツノが生えた主人公「オニくん」と中学生のみのるくん、そして周りの人たちの交流を温かく描いている。

主人公の「オニくん」

夏休みの前日、みのるくんは野球部の練習を見詰める小さなオニくんと出会う。その後、みのるくんの家族と共に暮らすことになったオニくんは、河原でのキャッチボール、学校と友だち、野球の試合など、いろんな“初めて”を経験していく。

ただ、穏やかに過ぎていくように見える日常にも、大小さまざまな出来事が。素直な気持ちを伝えられないもどかしさ、鬼であることの後ろめたさ、人と違うことへの悔しさ。さまざまな葛藤を、オニくんは正面から1つずつ乗り越えていく。

オニくんや登場人物が抱える悩みや苦しさは、少なからず、私たちが毎日のなかで感じるものでもある。だからこそ彼の健気な姿勢と飾らない率直な言葉は、切実に私たちの胸に響く。

「ひとりじゃできないこと ぼく そういうのをやりたいです みのると いっしょにやりたいです」
「ぼくは やきゅうがすきです ごはんをよくたべます ぼくは鬼だけど ぼくは ぼくです!」

また同書は全2巻がオールカラー、A5判という漫画作品としては大きめの判型のため、ながしまさんの繊細な絵をじっくりと味わえるのもうれしい。

オレンジ色に染まる夕暮れの帰り道、透明感のある青色の静かな薄暮。水彩表現を用いた優しく豊かな色彩は、爽やかな風の気配、肌を撫でる冷たい空気、遠くに聞こえる鳥の声など、描写されている以上の情景を思い起こさせる。そして、静かに私たちを物語の世界へと没入させていく。

登場人物の背景に広がる色と空気感は、どこか懐かしく、胸が締め付けられるよう。

さらに現在、青山ブックセンター本店では刊行を記念した原画展が開催中だ。会場では色付けされる前の鉛筆画が展示されており、柔らかな線に感じる強弱、丁寧で緻密な塗りこみなど、原画ならではの魅力を味わうことが出来る。会期は18日(金)まで。

ながしまひろみさんが柔らかな感性で描いた初の長篇『鬼の子』。原画と作品の両方を、ぜひこの機会に楽しみたい。

緻密な描きこみを見られる原画。完成版と見比べて楽しみたい。

 

<プロフィール>

ながしまひろみ/マンガ家・イラストレーター。デザインの仕事をしながらマンガを描き始め、2019年6月からフリーランスとして活動。著書にマンガ『やさしく、つよく、おもしろく。』(ほぼ日ブックス)や、絵本『そらいろのてがみ』(岩崎書店)がある。

 


『鬼の子(1)』(小学館)

『鬼の子(2)』(小学館)

 

ながしまひろみ『鬼の子』(小学館)刊行記念 マンガ原画展

会場:青山ブックセンター本店 ギャラリースペース

会期:開催中~12月18日(金) *最終日は17:00まで

住所:東京都渋谷区神宮前5-53-67コスモス青山ガーデンフロア (B2F)

時間:10:30~21:30

Webサイト:http://www.aoyamabc.jp/fair/oninoko


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