【展覧会レポート】「どうぶつかいぎ展」がPLAY! MUSEUMで開幕

エーリヒ・ケストナーの名作絵本『動物会議』(1949年)をテーマにした展覧会「どうぶつかいぎ展」が、東京・立川市のPLAY! MUSEUMでスタートした。会期は4月10日(日)まで。

『エーミールと探偵たち』や『飛ぶ教室』など、数多くの名作を生み出したドイツの小説家エーリヒ・ケストナー。第2次世界大戦後、ケストナーが長年タッグを組んでいた挿絵画家ヴァルター・トリアーと共に生み出した絵本が『動物会議』だ。

『動物会議』がこの世に発表されたのは、第2次世界大戦終結から4年後の1949年。自身も戦争で憂き目を見たケストナーは、この絵本の中で戦争を止めようとしない愚かな人間を痛烈に批判する。それは同時に、「人間にとって最も大切な価値は何か」を子どもたちに伝える、ケストナーの使命感の現れでもあった。

今回PLAY! MUSEUMで開催される「どうぶつかいぎ展」は、ケストナーの精神を引き継ぎ、さらに8名の作家が物語に新たな魅力を吹きこむ画期的な展覧会だ。同展では、絵本を8つの場面に分割し、アーティストがさまざまな再解釈を加えて作品を制作した。それぞれの見どころを簡単に紹介する。

 

第1章「まったく、人間どもったら!」

入り口すぐに現れるのは、ぬいぐるみ作家・梅津恭子さんによる3体の動物たち。普段は30cmほどの作品を制作しているという梅津さんが、苦労しながらも大型の作品を作り上げた。近くで眺めれば、動物たちの肌の風合いまで表現されているのがよく分かる。

第2章「動物ビルで会議があるぞ!」

進んでいくと、壁面にはイラストレーターの秦直也さんの作品がずらりと飾られている。その数、なんと110点。空想と現実を行き来するような姿の動物たち。どの絵にも、秦さんのきらりとしたアイデアが光る。

 

第3章「世界をきちんとしてみせるよ!」

アニメーション作家の村田朋泰さんの作品。電車や飛行機から、動物たちがこちらに元気よく手を振っている。置かれたゴーグルを覗くとそこには……。絵本の中に入りこんだような感覚を味わえる。

 

第4章「世界一へんてこなビル」

そびえ立つ黄色の「動物ビル」には、造形作家・植田楽さんの動物たちが並ぶ。紙とセロハンテープで出来ているとは思えないほど、精密な仕上がり。今回制作したほとんどが、絶滅危惧種やすでに絶滅してしまった動物たちだそう。

 

第5章「子どもたちのために!」

映像作家の菱川勢一さんは、夜の森に迷いこんだような空間を作り上げた。辺りには動物たちの声が至る所に聞こえる。鼓動が自然と速まるような、“獣の気配”を感じた。

 

第6章「連中もなかなかやるもんだ」

現代美術家の鴻池朋子さんによるインスタレーション。牛革に描かれた動物たちの視線は、こちらを射抜く強さを持っている。影絵作品の展示も。

 

第7章「人類がふるえあがった日」

大判のポスター連作は、画家のjunaidaさんの作品。目隠しをされた子どもたちの絵に掲げられた、「NO BORDER」「NO WAR」「FOR PEACE」「FOR US」「FOR FUTURE」の言葉が胸を打つ。

 

エピローグ 動物会議はつづく

絵本作家ヨシタケシンスケさんが“勝手に考えた”という「動物会議の最終日」。果たして、ヨシタケさんはこの絵本の最後に何を見たのだろう?

 

絵本『動物会議』がこの世に誕生してから、70年以上が経った。しかし、いまなお、戦争は途絶えることなく、軍や抑止力のにらみ合いが続いている。8名の作家たちによって再び光が当てられた、ケストナーからのメッセージ。「どうぶつかいぎ展」を見た後、あなたの心には一体何が残っているだろうか。

 


「どうぶつかいぎ展」

会期:2022年2月5日(土)〜2022年4月10日(日)*会期中2月27日(日)は休館

会場:PLAY! MUSEUM

住所:東京都立川市緑町3-1 GREEN SPRINGS W3

時間:10:00〜18:00 *平日は17:00まで/入場は閉館の30分前まで

入場料:同時開催の「ぐりとぐら しあわせの本」展の料金も含む

一般 1,500円 /大学生1,000円/高校生800円/中・小学生500円/未就学児無料

*各種割引制度は、ギャラリーのWebサイトをご確認下さい。

Webサイト:https://play2020.jp

問い合わせ先:042-518-9625


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