『illustration FILE 2020』の巻頭企画「イラストレーターに聞く“5つの質問”」。そこには、イラストレーターのみなさんの実感の伴った言葉が多数掲載されています。COVID-19の感染拡大によって、さまざまな変化があった2020年。イラストレーターの方々は何を考え、感じ、どのように絵を描いていたのでしょうか?
本記事では、掲載された方々の中から編集部が12名をピックアップし、当時の回答をそのまま紹介します。第1回目に登場するのは、これまでに数多くの装画を手がけるagoeraさんです。
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agoera
プロフィール:1986年生まれ。静岡県出身。2009年多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。MJイラストレーシ ョンズ修了。2013年ザ・チョイス年 度賞入賞。2015年HBファイルコンペ鈴木成一賞。書籍の装画・挿絵 を中心に、さまざまな媒体で活動している。
Q1
2020年代のイラストレーションの変容や拡張、 イラストレーターとしての在り方の変化を感じますか? または、現在具体的に自身の活動で力を入れていることは?
この数年間でイラストレーションの多様性はさらに広がっているように思います。そういった流れのなかで自分の表現をさらに独自性を持って突きつめていくべきだと感じていますが、扱いづらいものになりすぎないよう、コミュニケーションできるイラストレーションを描き続けたいと思っています。イラストレーションの表現にもさまざまなフィールドがあり、好まない表現を公に批判する人もいますが、相反する価値観のなかにも必ず取り入れるべきものがあるので、そういう視点は常に忘れないようにしたいです。
Q2
仕事や自主制作の時に使用する画材や紙、デバイス、ソフトウェアはどういったものですか?
シリウス水彩画紙、ベニヤ板にアクリル絵具(リキテックス)で描いています。展示では飾りやすさを考えてベニヤ板を使うことが多いです。画材は今までほとんど変化していませんが、モノクロの仕事ではデータ上でテクスチャを加えることが増えてきました。今後はラフスケッチなどはデジタルで行い、色の計画など念入りにできるようにしたいと思っています。
Q3
イラストレーションや絵画、デザイン、写真、映像などの視覚表現で、2019年印象に残ったものは?
ギャラリーハウスMAYAでの牧野千穂さんの個展「森に隠す」。またキービジュアルを担当した、桑原裕子さん脚本の舞台「荒れ野」が素晴らしかったです。
Q4
絵を描く時の思考や技術の礎、実作業の時の着想源や資料として利用するものはどんなものですか?
自分の絵のタッチは情報量が多いので、描くモチーフや構図はできるだけシンプルに、見る人に直感的に伝わるように心がけています。資料は自分で雑多に撮りためた写真を利用したり、最近はPinterestでモチーフを探すことが多いです。
Q5
仕事をするなかで気をつけていること、知っていてよかったこと、今後身につけたい技術や知識は?
オーダーに従いすぎて“描かされた絵”にならないよう、ただ指示されたことを鵜呑みにするのではなく、どうしてそうしたいのか相手が伝えたい本質を理解して自分の表現に適した解決方法を提示するなど、自分の表現に落としこむことを強く意識するようにし ています。以前Twitterで話題になったデータのプロファイルについての議論はとても参考になりました。Photoshopなどの技術的な知識は自分が使う範囲以上のことはなかなか学ぶことができないので、今後知識を得られる場を増やしていきたいです。最近は時代物の仕事が増えてきているので、過去の時代の服装や髪型などのことももっと詳しく知りたいと思っています。
※本記事は『illustration FILE 2020 上巻』の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承下さい。