駆け出しクリエイターのための著作権Q&A(第4回・成果物の使用範囲と違約金)

あなたの作品は大丈夫…?時間をかけて作ったものを無断盗用されたり、 はたまた知らずに著作権を侵害していたり…。トラブルに巻き込まれないためにも、最低限の知識は身につけておきたいものです。

本記事では、書籍駆け出しクリエイターのための著作権Q&A』(川上大雅著)から、クリエイターのよくあるトラブルの事例と回避策をご紹介。権利や契約、お金の話をやわらかく、少しかみ砕いて解説します。第4回のテーマは前回に引き続き、トラブルを未然に防ぐ「成果物の定め方」です。

(連載のまとめはこちらから)

 

成果物の使用範囲と違約金を定めておく

 何とか納品までたどり着いていったんは仕事が終わったものの、気づいたときには成果物が勝手に変更されて、とてもヤバいことになっていた……みたいなパターンも後を絶ちません。

 成果物の使用範囲を定めることは面倒かもしれませんが、あらかじめ決めておく必要があります。

 一例として、ロゴマークを制作した場合の使用範囲の区切り方を以下に紹介しておきます。断りなしにやってもらってよいこと、相談してもらいたいこと、やめてほしいことの3段階くらいに分けて区切ってみました。区切り方は色々ですが、ご参考までに。

1 作品完成後にできること

● 店舗などの掲示物に掲載すること
● SNSアイコンに利用すること
● 掲示物・看板を写真に撮りSNSに掲載すること
● その他依頼された目的用途に沿ったこと

2 相談の上で行ってほしいこと

● 掲載箇所の変更・追加、サイズの変更など別途作品を制作すること
● 増刷、増版に関すること
● グッズ(はがき、シール、Tシャツ、マグカップ、缶バッジなど、成果物そのものが商品価値の多く占める物品やコンテンツ)を制作すること

3 控えてほしいこと

● 改変に該当すること(お客様自身で作品の形や色、サイズを変更すること)
● 複製に該当すること(断りなくコピーやスキャンなどをして作品を複製すること)
● 他社、他デザイナーへデザインを提供すること
● 目的外使用に該当すること
● 公序良俗に反する利用をすること
● 特定の思想を支持しているように誤認させる利用をすること

 望まない利用(上記の場合では、「3.控えてほしいこと」に該当する場合)に対しては、違約金を設定したり、強い対応を定めておいてもいいかもしれません。あらかじめこうした強い対応をすることを明確にしておくことで、かえって成果物を大事にしてくれるということもありますから、気後れする必要はありません。

 


駆け出しクリエイターのための著作権Q&A』(川上大雅著)
「意外と」と言っていいのか、「全然」と言っていいのか、権利の話は避けて通ってきている人が多いでしょうし、契約やお金の話はさらに苦手で極力避けてきている人が多いのではないでしょうか。

本書は、そんなあなたに、著作権をはじめとする権利を少しやわらかく、契約やお金の話についても毛嫌いしないためのきっかけを与えるものです。巻末には、権利関係でもめないための7つの契約書ひな形を掲載。

<プロフィール>

かわかみたいが/弁護士・弁理士。

1980年、札幌生まれ。2008年に弁護士登録。札幌市内の事務所にて勤務。2010年にギャラリー「salon cojica」を開廊。2014年「札幌北商標法律事務所」開所、同所にギャラリーsalon cojicaを移転し、現在に至る。美術と法律のあいだで、様々な側面からクリエイターを支えている。近年の関わりとして「なえぼのアートスタジオ」「geidaiRAM」などがある。

https://www.satsukita-law.jp/
https://www.salon-cojica.com/

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