イラストレーターに聞く“5つの質問” 第10回 水谷さるころさん

『illustration FILE 2020』の巻頭企画「イラストレーターに聞く“5つの質問”」。そこには、イラストレーターのみなさんの実感の伴った言葉が多数掲載されています。COVID-19の感染拡大によって、さまざまな変化があった2020年。イラストレーターの方々は何を考え、感じ、どのように絵を描いていたのでしょうか?

本記事では、掲載された方々の中から編集部が12名をピックアップし、当時の回答をそのまま紹介します。第10回目に登場するのは、漫画家やグラフィックデザイナーとしても活動されている、水谷さるころさんです。

(連載のまとめはこちらから)

 


水谷さるころ

1976年千葉県生まれ。女子美術短期大学卒業。イラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。自著では装丁も全て手がけている。旅行記コミック多数。事実婚をしており、婚姻にまつわる著作も多い。趣味は献血と空手(黒帯弐段)。古墳が好き。

Web:https://www.salu-pro.com

 

Q1

2020年代のイラストレーションの変容や拡張、 イラストレーターとしての在り方の変化を感じますか? または、現在具体的に自身の活動で力を入れていることは?

イラストレーターは “他者のメッセージを伝える仕事” であると考えていますが、同時に自分から発信することも必要であると思っています。それゆえに、私自身は現在マンガやコラムの仕事が増えてしまいました。とはいえ、自分が感じる日常の疑問、違和感などを発信することで共感を得て「価値観が近しいので」と依頼されることは多々あります。このSNSが大きな影響力がある時代に、常に受け身にならず、どのようなイメージやメッセージを発信し続けられるかが大事だと思います。ここ5年ほど、週3〜5日は仕事以外でマンガを描いてブログで更新しています。

 

Q2

仕事や自主制作の時に使用する画材や紙、デバイス、ソフトウェアはどういったものですか?

Illustrator、Photoshop、CLIP STUDIO(がすべてです)。ワコムの液晶ペンタブレットがメインで、ほぼそれで描いています。サブとしてiPad Proを使用。外出先や旅行先だけでなく、子どもが体調不良などになっても仕事机以外で描けるので重宝しています。

 

Q3

イラストレーションや絵画、デザイン、写真、映像などの視覚表現で、2019年印象に残ったものは?

ステージは総合的な視覚表現ということで、星野源「POP VIRUS」ツアーです。ポピュラリティとクオリティ、創作者本人がコントロールすること……できないこと。すべてのバランスについて、妥協と噓のないクリエイティブというものの存在を見た気がしました。創作者が受け手を信じることが大切であるということに気づかされましたが、自分はつい疑心暗鬼になりがちなので、受け手を信じる強さを得たいです。

 

Q4

絵を描く時の思考や技術の礎、実作業の時の着想源や資料として利用するものはどんなものですか?

その昔「アーティストとして活動をしないか」と言われたことがあります。その時に、自分は絵を描くこと自体が目的ではなく、グラフィックデザイン的な要素も含めて、何かを伝えたり、コミュニケーションすることが目的であると自覚しました。それゆえに、自分やクライアントのメッセージを伝えるために描いている意識が強くあります。なので、常にコミュニケーションや対話という視点で構成しています。言葉を使って説明する以上に、一目見た瞬間に伝わるよう、デフォルメの取捨選択により何を伝え何を感じ取らせないかというようなことをいつも考えています。

 

Q5

仕事をするなかで気をつけていること、知っていてよかったこと、今後身につけたい技術や知識は?

イラストレーションの権利についてはある程度知識がないと、交渉できないこともあるので、最低限の権利関係については学ぶようにしています。また金額交渉をするにはお金の知識が必要なので、税金についてなども含めて勉強しなければと思っています。

 


※本記事は『illustration FILE 2020 下巻』の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承下さい。

『illustration FILE 2020 下巻』(玄光社)


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