『illustration FILE 2021』巻頭企画「イラストレーターに聞く“5つの質問”」。そこには、イラストレーターのみなさんの実感を伴った言葉が多数掲載されています。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中で、混乱が日常となっていった2021年。イラストレーターの方々は何を考え、感じ、どのように絵と向き合ってていたのでしょうか?
本記事では、掲載された方々の中から編集部が12名をピックアップし、当時の回答をそのまま紹介します。第11回目に登場するのは、雑誌表紙や書籍装画から百貨店のキャンペーンなどの大型広告まで、さまざまな媒体に作品を提供する黒田愛里さんです。
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黒田愛里
1989年東京都生まれ。東京工芸大学芸術学部卒業。2013年TIS公募で審査員賞を受賞。雑誌や書籍、百貨店や商業施設の広告を中心に国内外のアパレルメーカーとのコラボレーション等、幅広く手がけている。TIS会員。
ウェブサイト:www.kurodaairi.com
Q1
“イラストレーション”という言葉が多様化する昨今、今後のイラストレーターとしての方向性やイラストレーションの可能性をどのように考え、活動していますか?
SNSでの発信が直接仕事に結び付くことも多く、より感覚の近い人同士が繋がるようになったと感じています。そういった中で自分の興味のあることや、心地よく感じたり心惹かれるものを作品として日々発信していくことを大切にしていきたいです。また、お仕事や制作を通して自身のスタイルや表現の幅を柔軟に広げていきたいと思っています。
Q2
仕事や自主制作の時に使用する画材や紙、デバイス、ソフトウェアはどういったものですか?
ラフは着彩した状態で出すことが多いので、iPad ProのProcreateで制作しています。本画はProcreateで制作することもあれば、水彩紙にアクリルガッシュで着彩してPhotoshopで色味等の調整をする場合もあります。
Q3
COVID-19の影響による生活や仕事の変化はどのようなものでしたか?
外に出てリフレッシュする時間を積極的に取るようになりました。散歩が中心ですが、音楽を聴いたりドッグランを見に行ったり、歩いたことのない道をあえて通ったりと日常生活の中で楽しいと感じる時間を少しでも取るように心がけています。散歩中にアイデアが浮かぶことも多く、仕事のモチベーションも上がるので習慣になりつつあります。
Q4
絵を描く時の思考や技術の礎、実作業の時の着想源や資料として利用するものはどんなものですか? また、2020年印象に残ったものは?
日常生活の中で見かけた人や動物、植物や風景等、気になることをメモやノートに描き溜めて、そこから徐々に形にしていくことが多いです。InstagramやPinterestも資料としてよく活用しています。Cuusheさんの音楽が好きでよく聴くのですが、久野遥子さんがアニメーションを担当されているMVの音楽と融合した美しい世界観と独特の色彩や心象風景にとても惹き込まれます。
Q5
仕事上で気を付けていること、知っていてよかったこと、今後身に付けたい技術や知識はありますか?
スケジュールやギャラ、使用範囲や期間等をしっかり確認するようにしています。あとはラフの段階で、タッチや世界観等、求められているイメージと相違がないかを確認するため、なるべく着彩ラフで出すようにしています。また、ショーウィンドウのディスプレイ等もいつか出来たらよいなと思っているので、見せ方の幅を広げる方法の1つとして、自分の作品を立体的に捉える取り組みをしていきたいと考えています。iPad Proのアプリをいろいろ試しながらデジタルによる制作にも力を入れていきたいです。
※本記事は『illustration FILE 2021』上巻の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。