(連載のまとめはこちらから)
高橋潤
1969年札幌市生まれ。主に広告や雑誌のイラストレーションを手がける。多角形による色面構成で人物の躍動感や情景を捉えるのが得意です。2016年TIS公募入選、2017年HBファイルコンペ特別賞。TIS会員。
ウェブサイト:http://juntakahashi.jp
Q1
“イラストレーション”という言葉が多様化する昨今、今後のイラストレーターとしての方向性やイラストレーションの可能性をどのように考え、活動していますか?
コロナ禍の影響で社会考察・未来予想系のイラストレーション需要が加速したのではないでしょうか。まだ起きてない見たことのないことだからこそ、イラストレーションが必要とされるのだと思います。クライアントワークが基本ですが、自分1人で出来ることは限られるので、他の技術者や異業種の人との共同作業も試みてみたい。また、現在紙以外の素材を利用した商品を印刷会社のディレクターと試作中です。アウトプットの手段を変えることによって、作品への取り組み方がどのように変化するか期待しています。
Q2
仕事や自主制作の時に使用する画材や紙、デバイス、ソフトウェアはどういったものですか?
アイデアを出す時は煩わしいことから一切解放されたいので、コピー用紙と鉛筆が必須です。あと練り消しも。これら以外の道具は引っ込んでいて欲しい。本番はiMac 27インチを使用しています。ソフトはIllustratorとPhotoshopがメイン。コミックイラストの場合はWacomの液タブCintiq 13HDと、線画ツールとしてCELSYSのCLIP STUDIO PAINTを使用していますが、彩色はPhotoshopです。液タブは近々Cintiq 16を購入予定(*2022年現在 液タブ新調により、ラフ段階から液タブを使うようになりました)。
Q3
COVID-19の影響による生活や仕事の変化はどのようなものでしたか?
プロジェクトのために制作したイラストレーションの使用中止や規模縮小、延期や見送りになった案件もありましたが、その一方でCOVID-19関連のお仕事の受注もありました。以前に増して健康維持に注意しています。 ストレッチを1日に数回取り入れることで、腰痛がほぼ解消されました。お勧めです。
Q4
絵を描く時の思考や技術の礎、実作業の時の着想源や資料として利用するものはどんなものですか? また、2020年印象に残ったものは?
50~60年代のモダンデザインや海外のコミックスが自分自身を構成する成分になっているんだろうな、と結果的には思います。ただ、目標としているわけではありません。好きなことに対しては固着せず、無責任でありたい。絵作りのきっかけとして画像検索もしますが、日本語以外のワードも入力することが多いので、結構時間がかかってしまうんですよね。
Q5
仕事上で気を付けていること、知っていてよかったこと、今後身に付けたい技術や知識はありますか?
私の絵は肉付けのない構造むき出しな作風なので、出来の良し悪しは最初の設計でほとんど決まってし まうのですが、それでも仕上げの過程で思わぬアイデアが出たり変更したりする部分があります。その瞬間がスリリングで面白いし、モチベーションにも繋がっています。8割の計画と2割の偶然性が大事なのかな、と。アイデア段階において「これはクライアントにとってコンプライアンス的な問題があるんじゃないか?」等と自分の勝手な憶測によって、肝心なアイデアが萎縮してしまってはいけません。イラストレーターは絵的な知見による提案をすればいいのですから(押し売りの推奨ではありませんよ。念のため)。
※本記事は『illustration FILE 2021 下巻』の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承ください。