イラストレーターに聞く“5つの質問”  第3回芦野公平さん

『illustration FILE 2020』の巻頭企画「イラストレーターに聞く“5つの質問”」。そこには、イラストレーターのみなさんの実感の伴った言葉が多数掲載されています。COVID-19の感染拡大によって、さまざまな変化があった2020年。イラストレーターの方々は何を考え、感じ、どのように絵を描いていたのでしょうか?

本記事では、掲載された方々の中から編集部が12名をピックアップし、当時の回答をそのまま紹介します。第3回目に登場するのは、数多くの広告や雑誌の表紙・挿絵などを手がける芦野公平さんです。

(連載のまとめはこちらから)

 


芦野公平

オリジナル作品「CITY BOOKS」(FOLK old book store企画 約100人のブックカバー展出展作品)

1978年生まれ。ザ・チョイス入選、 ノート展大賞。書籍、雑誌、広告 等で活動中。

Q1

2020年代のイラストレーションの変容や拡張、 イラストレーターとしての在り方の変化を感じますか? または、現在具体的に自身の活動で力を入れていることは?

あらゆる表現がポリコレや人権意識の観点からジャッジされるので、クライアントからの要請に無防備でいるのは危険な時代ですよね(だから気をつける、というのは本質的ではありませんが)。これからは特に意識をアップデートし、違和感に敏感であることが必要だと思います。また、経済活動の規模にかかわらず、イラストレーションを通して人々の意識や感覚をリードする人をイラストレーターと呼ぶ時代がきているようにも思います。人間性や暮らしを“オシャレに漂白”しない態度や作品にこそ真のお洒落さを感じることも多いですし、そういう価値観をリードする力もイラストレーションにはある気がします。

Q2

仕事や自主制作の時に使用する画材や紙、デバイス、ソフトウェアはどういったものですか?

仕上げの画材や技法はさまざまですが、ラフはほぼiPad ProのProcreateを使い、仕上がりに近いイメージで描くことが多いです。ブラシの性能のよさなど、痒いところに手が届きすぎるので、ラフでハードルを上げてしまう落とし穴もありますが……。

Q3

イラストレーションや絵画、デザイン、写真、映像などの視覚表現で、2019年印象に残ったものは?

『銀河の果ての落とし穴』の装丁(D:川名潤さん、ill:矢野恵司さん)、Adrian Johnsonさんのユニクロ『LifeWear magazine』のカバーイラスト、土屋萌児さんのアニメーション「惑星兄弟」(Eテレ「シャキーン!」)、村松祐樹さんの「2040年の静物画」シリーズ、白尾可奈子さんの木彫彫刻、平井利和さんの日本財団ビジュアル、一乗ひかるさんの作品全般(まだまだたくさんあります!)。

Q4

絵を描く時の思考や技術の礎、実作業の時の着想源や資料として利用するものはどんなものですか?

描いている時の自由な気分や窮屈さはそのまま見る人に届くので、とにかく楽しむようにしています。以前は絵を殺すような忖度をしがちでしたが、いろいろ経験するなかで、クオリティを担保する上でも楽しく描くことが一番と考えるようになりました。着想源や資料は海外の古い絵本を見るのが好きなのですが、現代に継承されているベーシックな表現のルーツを再確認することもあれば、時代を感じさせない斬新なアイデアや描き方を発見することも多く、豊かな刺激になっています。

Q5

仕事をするなかで気をつけていること、知っていてよかったこと、今後身につけたい技術や知識は?

透明水彩仕上げのカット案件で、100点以上のラフが揃った段階で(もともとタイトな進行でしたが)時間の余裕がなくなった時、ちょうど数日前にリリースされたAdobeのiOSアプリFrescoの存在をTwitterを通して知っていたので、(関係各位と納得のいくクオリティのサンプルを共有し、相談した上で)それで仕上げたことがありました。

 


※本記事は『illustration FILE 2020 上巻』の内容を本Webサイト用に調整・再録したものです。記載している内容は出版当時の情報であり、本日時点での状況と異なる可能性があります。あらかじめご了承下さい。

『illustration FILE 2020 上巻』(玄光社)


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