令和版 駆け出しクリエイターのためのお金と確定申告Q&A(第1回・源泉っていったい何なの?)

税金や確定申告って、必要なことだけど何だか難しそう。一体、どこから手を付けたらいいの……? そう思って、漠然とした不安を抱えている人も多いはず。

本記事では、書籍『令和版 駆け出しクリエイターのためのお金と確定申告Q&A』(桑原清幸著)から、クリエイターのみなさんのお金にまつわるQ&Aを厳選して紹介。基本的な疑問、実践的な質問などを実例で分かりやすく解説します。第1回は、源泉徴収についての素朴な疑問にお答えします。

(全7回・連載のまとめはこちらから)

 

源泉っていったい何なの?

Q:
デザイン事務所で働いています。空いた時間で、友達の会社のウェブデザインを手伝いました。報酬は5万円という話でしたが、会社宛に請求書を出すにあたり、源泉を引くよう指示されました。そもそも源泉っていったい何なのでしょうか? ぜんぜん意味がわかりません。
A:
源泉とは、正しくは「源泉徴収」という名称で、報酬が発生した時点で国が所得税を先取りするしくみのことです。

 

 「源泉徴収」とは、文字どおり、(お金が生じる)みなもとから、(税金を)取るという意味です。例えて言えば、富士山の雪解け水が流れ出る源流までさかのぼって、おいしい水を汲むようなイメージですね。つまり、「源泉徴収」とは、税金を取りやすい最初の段階(報酬が発生した時点)で、国が先取りしてしまおうという制度なのです。

 後払い、つまり、会社が報酬を全額払った後に、国が皆さんから税金を取ろうとしても、皆さんが全部使ってしまっていたら、国は取り損ねてしまいますね。源泉徴収制度は、国が皆さんから上手に税金を取るために考えたしくみで、取る側としては賢い方法といえます。

 言いかえれば、本来 あなたが「個人」として国に納めるべき所得税を、報酬を払う側の「会社」があらかじめ天引きして、あなたの代わりに国に納めるしくみ をいいます。ちなみに会社が天引きした所得税のことを「源泉所得税」といいます。

 

▶︎ 源泉徴収のイメージ

 

 「源泉徴収」するのは、会社の義務とされています。義務とされている以上、源泉徴収しないと「会社」が税務署からペナルティを受けます。一方で、あなたは報酬をもらう側なので、何もする必要はありません。あなたがもらう報酬(額面、総額)から、約1割が税金として天引きされて、残った約9割が手取りとして振り込まれるのです。

 源泉徴収の税率は、正確には10.21%です。以前は10%でわかりやすかったのですが、東日本大震災の後から「復興特別所得税」として、0.21%が追加で徴収されています(令和19年まで)。なお、同じ人に対して1回に支払われる報酬が100万円を超える と、100万円を超えた部分については20.42%と税率が2倍となります。

 100万円を超えるような高額な報酬をもらったときは、高い税率で天引きされることを覚えておきましょう。

 

▶︎第2回(インボイス制度で何が変わるの?)

 


『令和版 駆け出しクリエイターのためのお金と確定申告Q&A』

本記事でご紹介したQ&Aのほか、「取られた源泉は戻ってくる?」「自分の報酬からは源泉が引かれている?」など、源泉徴収についてさらに詳しくご紹介します。

<プロフィール>

くわばらきよゆき/1972 年群馬県渋川市生まれ。桑原清幸会計事務所代表。税理士・公認会計士。上智大学在学中に公認会計士試験に合格。アンダーセンコンサルティング(現アクセンチュア)に入社。大手会計事務所で 20年間勤務したのち、独立開業。会計事務所とアートを融合したギャラリーKKAG(Kiyoyuki Kuwabara Accounting Gallery)を設立。クリエイター向けの独立開業、会社設立、確定申告等を中心とした税務・経営アドバイザリー業務を行い、会計専門家の立場からアートビジネスの発展を支えている。趣味はライカカメラ収集。写真の暗室作業の他、秘湯スタンプ集め、日本酒立ち飲み屋巡りなど。

ウェブサイト(kkag.jp


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